今年6月、がんのため61歳の生涯を閉じたダンスプロデューサーの夏まゆみ。モーニング娘。、AKB48、ジャニーズなどのアイドルから吉本天然素材まで多くのアーティストの振り付けを手掛け、育てたことでも知られている。

 ここでは彼女の著書『エースと呼ばれる人は何をしているのか』(サンマーク出版)より一部抜粋。AKB48時代、前田敦子の「二番手」だった大島優子、そして高橋みなみのデビュー当時を振り返る。(全2回の前編/続きを読む)。

©文藝春秋

◆◆◆

ADVERTISEMENT

安倍なつみが持っていた強みは……

 エースの資格〈その2〉は「自信を持つ」ことです。

 じつは、自信を持つのはそれほど難しいことではありません。現時点で「自分に自信がないなぁ」という人は、ついつい誰かと自分を比較して、劣っているところばかり見ている傾向があるようです。

 以前、AKB48のあるメンバーが「○○ちゃんは歌がうまいし、△△ちゃんはダンスが上手、でも私には何もないんです」と泣きついてきたことがありました。

 こういうとき私は必ず「できないことや苦手なことが山ほどあったとしても、強みが一個あればいいんだよ」と言うようにしています。なぐさめではなく心底そう思います。なぜなら核となる強みをひとつでも持っている人は、それをよりどころにして、さまざまな困難を乗り越えていけるからです。

 実例をあげて説明すると、モーニング娘。の安倍なつみは集中力という強みを持っていました。彼女がモーニング娘。のセンターに起用されたのは、この集中力があったからにほかなりません。

 アイドルグループのセンターはステージ上の人数によってダンスの動きが大きく変わってしまうという、負担の大きいポジションです。とくにモーニング娘。のときは本番直前にフォーメーションが変更になるといったアクシデントが何度もあって、そのたびに安倍は大変な思いをしました。