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 これは意外と難しく、すらすらと10個思いつく人はなかなかいません。なかには3個くらいで詰まってしまう人もいます。

 ──でも、それでもいいのです。

 この療法にはふたつの側面があって、ひとつは、好きなことを考えていると、それだけで自然とポジティブな気持ちになれること。私はよく教え子が落ち込んだときにこれを試しますが、好きなものを1個、2個と数えているうちに、顔つきがどんどん明るくなっていくのがわかります。

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 もうひとつは、自分にとって大事なものは身近にあると気づけることです。

 ほとんどの人は「好きなもの」と言われるとなぜか食べ物を連想するようで、リストのなかにはだいたい「ケーキ」とか「バナナ」とか好きな食べ物が入っています。そうしたら、その食べ物をすぐさま買いに行き、こう考えるのです。

「この世に生きて好きだと思ったもの10個のうち1個がもう手に入った!」

 どうでしょうか。

 大げさに聞こえるかもしれませんが、実際にそれを手に入れたり、好きなことを実行したりするだけで楽しくなり、ネガティブな気持ちは必ず薄れていきます。簡単なことではありますが、実行すれば達成できるという実感も伴い、それがちょっとした自信として蓄えられていくのです。

ダンスが下手でスキップすらできなかった高橋みなみ

 エースの条件、最後のひとつは「前に向かって進む」ことです。前向きに考え、行動できることは、ほかのどんな弱点を補ってもあまりあるほどの強みになります。

 たとえばAKB48の高橋みなみ──。

©文藝春秋

 いまではグループ総監督になっている彼女ですが、第一期生として入ってきたばかりのころは目を覆いたくなるほどダンスが下手で、スキップすらできませんでした。

 でも高橋は「私は踊りが下手だからダメだ」なんて後ろ向きなことは一度も言いませんでした。マネジャーに「なんだ高橋、スキップもできないのか」とバカにされても、ヘヘヘと笑いながら舞台の隅でずっとスキップを練習していました。

 そのスキップがまたヘンテコで、さらに周囲の失笑を買うのですが、それでも平気な顔を見せています。