──ふつうの女の子なら「恥ずかしい」と感じて腰が引ける場面かもしれません。
でもそれを表には出さないで、へっちゃらなふりをして練習しているのです。多感な十代の女の子には、なかなかできることではないと思います。でも、この「恥をかくことを恐れない」ことが、必ずあなたの強みになります。恥を恐れるか、恐れないか、それは前に進もうとする自分にブレーキをかけて勢いを殺すのか、アクセルを踏んで勢いをつけるのか、それほど大きく成長に関わってきます。
それでも高橋みなみは諦めることなく文字通り“前向き”だった
高橋は、人の話を聴くときの姿勢も、文字どおり“前向き”でした。
私は集団でダンスのレッスンを行うときでも、気持ちはつねに一対一のつもりで話をします。そのころはAKBのチームA(いまで言う一期生)の子たちを指導していましたから、二十数人がずらっと並んでいるところへ、私がみんなと順番に目を合わせながら、プロ意識を覚かく醒せいさせるための話を切々とするというシチュエーションだったと思います。
こういうとき、メンバーのなかにはなんとなく目をふせたり、誰かの後ろに隠れたりする子が必ずいるのですが、高橋はいつでもじっと私の顔を見て話を聴いてくれました。おおげさに身を乗り出したり、ウンウンとうなずいたりしているわけではありません。
でも、横並びのメンバーのなかで、彼女だけがグッと前に出てきているような、私との距離がとても近いような印象を受けるのです。高橋が本気で私の話を聴こう、話を聴いて吸収しようと思っていたからこそ感じたことだと思います。
このような前向きさは、人の“達成力”を高め、実現のスピードを速めます。
誰だって練習すればスキップくらいできるようになるし、いつかはダンスも踊れます。けれども高橋は人の話を真剣に聴き、恥をかくことを恐れず前向きに練習をしたことで、私が期待した以上のスピードで上達していきました。
いまでも高橋はダンスが下手だとネタにされることがありますが、少なくとも私は十分立派に踊れていると思うし、AKB48に入ってからの伸び率でいうなら全メンバー中トップクラスではないかと思います。