文春オンライン

「全身刺青のヤクザと除染作業をやってると…」サラ金の取り立て、おっぱいパブの呼び込みも経験…大藪春彦賞作家・赤松利市(67)の人生がヤバすぎた!

赤松利市インタビュー

2023/08/27

genre : ライフ, 社会

note

 素人のお客様が借りてプロのこちらが貸したのだから、返済が滞っている現状に対する責任は、読みが甘かったこちらにあります。ただし、貸した以上は返していただかねばならない。ここはお互い協力して生活再建を始めましょう、と。

 同意いただけたお客様とは、いっしょに家計の貸借対照表をつくりました。昨日は何を食べましたか、それに使った卵はいくらでしたかと細かく聞き取り、表にまとめていく。ひと月分を細かく算出して、これなら最終的に5000円残りますね、その5000円をうちの返済に充ててくれませんか、とお願いするのです」

 なるほどそこまですれば、相手も払わざるを得ない。

ADVERTISEMENT

「いえ実際には、そこまでやっても、たいていのお客様は振り込んできません。とはいえ腹を立てている場合じゃない。大事なのは、振り込まれなかった約束日に、こちらから先方へ出向くことです。そうしてこちらから謝る。

 私、誠心誠意を込めてやったつもりでしたが、まだ足りなかったみたいです。もういっぺん最初から生活の見直しをやりましょう、お付き合いくださいますかと。

 これを5回も繰り返せば、以降はきっちり決まった日に返済金が振り込まれるようになります。他の社員が夜討ち朝駆けしているときに、私は銀行通帳の数字だけチェックすればよくなったのです」

貸す側と債務者。明日はどっちに転んでいるか分からない……

 それにしても、よくぞそこまで独自のノウハウやシナリオを思い描けるものだ。どうやって思いつくのか。

「貸す側と借りる側、取り立てる債権者と返済の義務を背負った債務者の双方の立場があって、私はそのときたまたま貸す側であり債権者の立場でしたけど、いつ座る椅子が入れ替わってもおかしくないぞとはよく思っていました。明日はどっちに転んでいるか、だれにもわからない、人間なんてそんなものじゃないですか。だから、立場に寄りかかった態度だけはとらないようにと発想していました」

 若くして結果を出した赤松さんは、当然のごとく出世していく。

「岡山支店から本社へ呼ばれ、総務部そして営業企画本部へ。会社が上場準備に入るのを機に、新しい営業マニュアルの作成を任されます。

 これが大仕事でした。全社から選りすぐった5人を率いて、超人的に働いた。毎日、朝の4時か5時まで仕事をして、一杯ひっかけてからサウナで寝て、朝9時にはまた出社というのを半年間続けました。私以外の5人は全員途中でリタイヤし入院。最後の1人は夜中、私に襲いかかってきました。

 マニュアルが完成したとき、プロジェクトチームで残っていたのは私だけという有り様でした」

©文藝春秋 撮影/石川啓次

起業し従業員が100人以上に。訪れた“我が世の春”

 特異な星の下に生まれついたのか、それともみずから嵐を呼び寄せているのか定かでないが、赤松さんの人生はさらに流転する。