どうも、いつもの夏とは勝手が違う。ベイスターズにとって勢いが生まれる季節だったはず……猛暑も手伝ってスムーズな呼吸すら忘れそうになっていた頃、光が一筋差し込んで来ました。

 9月8日に発表された8月度月間MVP、セ・リーグからは牧秀悟選手とバウアー投手が受賞。ベイスターズから野手と投手が同時に選ばれるのは2019年の7月ロペス選手と山﨑康晃投手以来です。およそ12分間の受賞会見中、共に声質が高い二人の言葉はテンポ良く心に刻まれ、2度の4連敗があったにも関わらず13勝12敗1分けと勝ち越した8月の熱闘が頭を巡ります。

8月度月間MVPの牧選手とバウアー投手 ©tvk

 月間MVPの二人に加え東克樹投手と山本祐大捕手のバッテリーがチームを元気づけたこと。

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 すぐにでも投げたいバウアー投手自身が復帰の目途を明言しないということは、8月最後のタイガース戦で負った痛み(右腸腰筋遠位部損傷)は、楽観的ではないのだろうか?という心配……。

 8月は大事な場面を随分目の当たりにしていました。

牧選手はチームの宝だと思い知りました

「さあ、行こう!」

 牧選手はチームの宝だと思い知りました。ホームランには8月だけで少なくとも3度、目頭が熱くなっています。

 まずは11日、9回ジャイアンツ中川皓太投手から打った19号逆転2ラン。直前の8回、長野久義選手に一旦勝ち越しのソロを打たれていた東投手が喜びの涙を浮かべた瞬間です。この日は試合前にも牧選手の影響力を垣間見ました。前日横浜スタジアムでナイトゲームを戦い翌日に東京ドームへ場所を移してのデーゲーム、アップの時から選手たちの動きが、どうも重い。その中で牧選手が甲高い声で「さあ、行こう!」と発した瞬間、明らかに皆の動きにスイッチが入る。牧選手にとっては、いつも通りの行動だったと想像しますが、間違いなくチームが活気に満ちています。

 二つ目は8月の最も印象的な一打として牧選手本人が「自信になった」と振り返る、30日タイガース戦大竹耕太郎投手から放った右中間への24号決勝3ラン。甲子園の浜風に負けない見事な弾道でした。

 もう一つがその前日の29日、同じタイガース戦の9回。今シーズン一本もホームランを打たれていなかったタイガースの抑え岩崎優投手から、佐野恵太選手の同点2ランに続き23号決勝ソロ。この日私は、ベイスターズOBのボビー・ローズさんと共に観戦するツアーに参加し、甲子園のレフトスタンドで歓喜に包まれていました。牧選手のヒーローインタビューが心に焼き付いています。

「佐野さんが同点にしてくれたので、楽になりました。さすがキャプテンです」

 キャプテンの佐野選手は8月前半、6試合でノーヒットと苦戦。6日のタイガース戦、自力優勝が消滅してしまった一戦では、1点リードされた7回1アウト2、3塁で代打が出される、ファンにとって衝撃的な場面が。佐野選手は悔しさに目を赤くし、事実を受け止めた試合後の表情には疲労が見て取れました。

 それでも佐野選手は8月後半の14試合でホームラン4本13打点、3度の猛打賞と見事に復調。9月も10日現在打率333と上り調子で、お立ち台での眼差しは輝いていました。「さすが、キャプテン」と思わせてくれる試合は、まだまだ重なりそうです。