外国人選手のヒーローインタビューが好きだ。覚えたての日本語を話す姿や、通訳さんとのやり取りも何を話してくれるんだろうとじっくりと観察してしまう。

 生まれ育った国を離れて仕事をするのはどれだけ大変なことなんだろう。その場所で心から笑顔になるまでには、どれだけの時間がかかるんだろう。ルールは一緒でも、日本の野球には日本の野球の流れや作戦の特徴もあって、それをまず受け入れるにはどれだけ体とメンタルをすり減らすんだろう。外国人選手のヒーローインタビューはそこに至るまでの経緯も思うとより深くなる。今季はあと何度、その姿が見られるだろうか。

見渡せば周りのドラゴンズファンも大歓声だった

 今年、ファイターズの外国人選手の中で一番多くヒーローになっているのは捕手登録・アリエル・マルティネス選手だ。キューバ出身、昨年までドラゴンズで5年、自由契約となり今季からファイターズへ。来日してからもう6年目なので勝手に年齢を少し上に思っていたけれど、まだ27歳。ドラゴンズでは去年は一度もマスクを被らないまま、でもWBCではキューバ代表で捕手として出場した。あの姿があったので、ファイターズ入団後の新庄剛志監督の起用にはファンもすっと受け入れられたように思う。

ADVERTISEMENT

 132試合消化時点で、ここまでキャッチャー出場は31試合、うち29試合がスタメンマスク。最初のマスクは4月30日のホークス戦。コナー・メネズ投手とエスコンフィールドで組んで、パ・リーグでは32年ぶりの外国人バッテリーと話題になった。その後もほとんどの投手の球も受けているし、その他の守備でもバットでも大活躍。ここまでで、ヒーローインタビューは10回。

アリエル・マルティネス ©時事通信社

 6月17日のバンテリンドームナゴヤの交流戦では古巣ドラゴンズ相手に逆転3ランホームラン、それがキャリアハイの9本目にもなってこの日もヒーローだった。

 その日、私は北海道から名古屋へ行っていて生でのその活躍を見た。マルティネス選手の打席では周りのドラゴンズファンは自然に「アリエル~!」と呼び掛けていた。3ランホームランを打った瞬間はドーム内が大きな声援に包まれた。敵地だ、ファイターズファンだけでそれだけの盛り上がりには到底出来ない。

 見渡せば周りのドラゴンズファンも大歓声だった。スタンドの雰囲気、ドラゴンズファンの思いはマルティネス選手本人も良くわかっていた。ヒーローインタビューで何度も何度もドラゴンズとドラゴンズファンに感謝の気持ちを伝えた。「いま次のチームでいいプレーが出来ているのは、ここでの5年間があったからこそ」と気持ちが溢れた。