私の夢がひとつ叶った瞬間、それが「始球式」。

 PayPayドームで投げさせて頂いたのはコロナ禍の2020年9月5日のソフトバンクvsロッテ、まだ観客数が5000人に制限されている時でした。決まった時は当時のグループの担当マネージャーさんから連絡がきて「始球式決まりました!」と。それに私は1分も経たないうちに「ひぇええええええええ」と返していました。本当に全身に鳥肌が立ったのを覚えています。

 それはもう野球好きな私にとってはHKT48のシングル曲の選抜メンバーに選ばれるくらい嬉しさ喜び爆発の瞬間でした。

ADVERTISEMENT

 それから野球経験者の父とキャッチボールをして練習をしたり、本番はマウンドが少し盛り上がっているため段差から降りながら投げる練習もしました。

 目指すはノーバン!

 意気込んで練習をし、迎えた本番の日。まずは控室にいき、始球式の時の服装を教えていただきました。上はタカガールユニホームに『RIKO』と『48』の文字。うわ~本当に今日これを着て投げるんだ、PayPayドームで。PayPayドームは小さい頃から野球を観に来ていたのはもちろん「第7回AKB48総選挙(2015年)」で37位をいただいた特別な場所でもありました。特別な場所でこのユニホームを着てマウンドに立てるだなんてと思いました。

 服装の話に戻りますが、下に穿くデニムのパンツは歴代HKTメンバーが始球式をさせていただいた時に穿いている“デニムのショーパン”(ショートパンツ)。こちらも私にとってはただのデニムのショーパンではないのである。指原莉乃さんをはじめとする先輩メンバーがこのショーパンにユニホームを着て始球式をしている姿を見ていてずっと憧れでした!

“始球式といえば”なところが自分の中にあったのだと思います。

 そんなユニホームとショーパンというSETがさらに私の心をオドラせました。

©坂口理子

気がついたら、終わっていた始球式

 始球式の前に球場の裏で練習をさせていただいたのですが、投げているとどうやら大人の皆さんが「おー! いいね!」「いいですね!!」「ノーバンいけそうじゃないですか!!」と言っていたのです。だいぶ遠くに投げられるようになったのかな。

 いやいや、これプラス緊張!

 これプラス緊張! 緊張上乗せ!

 緊張120%増量!!

 そう思いつつ、「始球式が終わった後に少しだけ取材があります」と言われ、そこで聞かれる内容はだいたいこんな感じになると思われます!と、教えて頂いた際に「HKT48メンバーで初のノーバン達成のお気持ちいかがですか?」という質問がありました。

 うわーーー達成したい! うわーーーもしかして期待してくれている?

 一瞬でも自惚れた私がアホでした。

 案の定、暴投です。

 ノーバンならず……。

 父が使っているグローブを借り、父が羨ましがる気持ち、ホークス大好きな家族の思いも背負ってグランドへ足を踏み入れました。

 さ、行きますよー!と言われてマウンドへいき、マスクを外しマスクをポケットに。そこまで覚えてるんです。いや、その少し先まで覚えているんです。

「礼はそんな多くなくて良いけんな、みんな早く試合始まって欲しいけんあんまり長くするなよー」

 と父に言われた言葉が頭をよぎりながら礼をしました。

 確かにした、そこまで覚えてるんです。

 気がついたら、終わってたんです。本当に記憶がなくて、頭が真っ白になりました……。記憶が戻った頃には、練習の際に褒めてくださった大人の皆さんが全員のけ反りびっくりしていました。

 やってしまった。

 完全に、やってしまっている。

 後から映像をみたらしっっっっかり「あぁ!!」という私のやらかしたー!的な声が入っていました。

 恥ずかしい。凄く悔しかったです。

 そして当たり前に私は終わったあとの取材であの項目を聞かれる事はありませんでした……。

 さらに、自己採点してください!という取材での質問に42点と答えました(まだ自分の酷い映像を観ていなかった)。ノーバンならずでしたが始球式ができたこと、すごく誇りに思っていますし、真っ直ぐ投げられなかったけどこの広いグランドに立つ事ができたことで0点から50点が追加されましたが、なかなか思うようにいかなかったので8点を微妙に引きました。

 案の定終わってエゴサーチをすると「自己採点高すぎだろ」と書かれており、それはもう無事にメンタルがやられました(笑)。

 選手の皆さんが試合のプレーに対してSNSに書かれているのを見たときはこんな気持ちなのかなと、とてもおこがましいですが少し味わえた気がしました。