3日前の朝、スマホに「8年前の思い出」という通知が届いた。
2015年9月17日に撮った写真たちとの再会。ホークスが当時のパ・リーグ最速記録でリーグ優勝を達成した日のものだった。
あの頃はホークスオフィシャルメディアの仕事もしており、だからこそ撮影できた貴重な写真が本当にたくさん保存されていた。グラウンドで喜ぶ選手たちはもちろん、セレモニーを終えて1塁側ダグアウトすぐ裏の選手サロンに戻ってきたところでも何枚か撮影していた。ニコニコ顔でビールかけの準備をしている。8年前の中村晃が若い! その隣にいるのは2020年に急逝された川村隆史さんだ。ゴーグル姿の柳田悠岐の写真もあった。
それ以降も栄光の軌跡を描いてきたのがホークスだ。
しかし、2023年9月18日、今シーズンの優勝の可能性が完全に消滅し3年連続のV逸が決定した。ホークスが3年続けてリーグ優勝を逃したのは、いわゆる“黄金期”の2010年以降では初めてのこと。
チームもファンも、この現実は大変受け入れ難いものに違いない。
だが、日本一という可能性が残っている以上、ホークスは前を向き戦い続ける。決して諦めていない選手たちを、応援するファンが背中を押さない理由などないだろう。まず当面の目標になるのは、クライマックスシリーズの地元開催だ。2位確保へ、一戦必勝の試合が続いていく。
この大事な局面を勢いよく突っ走ることが、日本一に向けたポストシーズンの戦いにも繋がっていくはずだ。
周東こそがまさしくキーマンとなるのではなかろうか
猛スピードで駆け抜けろ――ホークスで言うならば、周東佑京のように。
そうだ。その周東こそがまさしく、終盤戦からポストシーズンにかけてチームに勢いをもたらすキーマンとなるのではなかろうか。
9月になり、1番打者に定着している。打撃がとにかく好調で日本ハム3連戦を終えた18日までの時点で月間14試合に出場して53打数21安打、打率.396と非常に高い成績をマークしている。
周東の足を野球ファンならば、みんな見てみたい。テレビで見るよりも球場で自分の目で確かめてみたいと思うのが当然だ。だから周東が塁に出ると、大袈裟でなく球場の空気が一変する。歓声の音量だけでなく一瞬を見逃すまいといった雰囲気に球場が包まれることで、野球観戦のライブ感の質を大いに高めてくれるのだ。現時点で月間すでに7盗塁を決めて、現在は31個で2度目となる盗塁王タイトルを、楽天の小深田大翔(30個)と争っている。
ともかく、打撃好調がこの好循環を生んでいるのだが、今年6月にこの文春野球に「折れたら終わり…ソフトバンク・周東佑京が明かす不思議な形の“こけしバット”を使う理由」といったコラムを寄せた。
グリップエンドが極端に大きく「こけし」の頭のような形をしているのがその名の由来となったバットで、近年ではメジャーリーグで流行り始めている。米国では人気スポーツのアイスホッケーのパックの形に似ていることから「パックノブ(PUCK KNOB)バット」と呼ばれている。
周東はこう話していた。
「僕の場合、周りから振りすぎるなよと言われますが、僕は当てに行く打撃はしたくないんです。ただ、このバットは力任せに振ると使えない。かといって、当てに行くような打撃では重いから振れない。つまり、僕のやりたいことも課題も解決してくれるバットなのかなと思います」
かなりお気に入りの様子を見せていたのだが、オールスター明けの後半戦から通常の形のバットをまた使うようになっていた。7月30日にはそのバットでサヨナラ安打を放っている。戻したのか?と訊ねると、返ってきたのは意外な答えだった。