甲子園で慶応高校が優勝した8月23日の早朝、大阪偕星学園高校の元関係者から「X(旧ツイッター)」のとある投稿が送られてきた。さっそくリンク先を開いてみると、そこには野球のグラウンドコートを着た年配男性が、球児と思しき高校生を椅子からなぎ倒し、床に頭を押しつける衝撃の映像があった。

 筆者は同校が甲子園に初出場した2015年夏に密着したことがあり、2021年に男性コーチによる生徒14人に対するセクハラ行為が発覚してからは、監督交代を繰り返しながらも終わる気配がない不祥事を報じてきた。

 今回SNSにアップされた“暴行動画”の場所と、年配の男性には心当たりがあった。場所は大阪市生野区にある大阪偕星学園野球部寮の食堂、力任せに球児を床に倒した男性は昨年1月に監督に就任した岩田徹氏(56)に違いなかった。

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大阪偕星高校野球部の岩田徹監督

 岩田氏はPL学園の出身で、KKコンビ(桑田真澄、清原和博)の1歳上の副キャプテンだった。高校卒業後、社会人チームを経て1989年にドラフト4位で阪神に入団した元プロ野球選手でもある。

 さっそく学校に取材を申し込むと、梶本秀二校長名による文書での回答があった。

「本校硬式野球部監督による不適切な指導があったことが、令和5年8月22日夜、SNSにて投稿された動画から発覚いたしました。発覚直後の翌23日、管理職から監督に聞き取りを行ったところ、生活態度等について生徒に指導する際、平手打ちや押し倒す暴力行為があったことを認めました」

生徒の首を掴んでなぎ倒し、床に頭を押しつける

 筆者が見た動画には平手打ちをする場面はなかったが、岩田氏への聞き取り調査の中で新たに出てきた事実ということだろう。気になるのは、現役の選手や保護者への説明および現在の指導体制だ。

「同日23日、大阪府高野連に当事案を報告し、その後、大阪府私学課にも同様の内容を報告いたしました。監督は現在、指導停止の謹慎処分としておりますが、今後の処遇については、日本学生野球協会審査室および日本高野連からの処分決定後、本校としての処遇を再度検討いたします。尚、硬式野球部員ならびに保護者たちへの説明は速やかに実施をし、既に終えております」

 あらためて動画を見返してみる。わずか十数秒の間に、岩田氏は食堂の椅子に座った生徒の首根っこを掴んでなぎ倒し、一緒に倒れた椅子を後方に蹴り飛ばすと、右手で力任せに球児の頭部を床に押しつけている。

SNSで拡散された動画の中で、生徒を地面に叩きつける岩田氏

 防犯カメラの映像をスマホで撮影したようで時折映像がぶれることもあったが、一瞬だけ2022年11月の日付が確認できた。