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羽生が星野に「ハマった理由」と「共通点」とは?

 羽生は星野のファンらしい。自身が初めてプロデュースしたアイスショーのタイトル「Continues ~with Wings~」(2018年)は、星野の楽曲『Continues』から影響を受けたものだったという。ハマったきっかけを聞かれた羽生は、「僕は(星野さんの)『地獄でなぜ悪い』って曲がホントに大好きで」と語りはじめた。

「基本的に僕すごく、いろいろ悩みとか、葛藤、孤独みたいなものを抱えている人間に対してすごい敏感ですし、自分自身もそういうことを感じていて。それこそ『地獄でなぜ悪い』っていう楽曲も、すごく闇を抱えている星野源が、ポップに歌い上げてるっていう、そういうところが好きで」

羽生は星野源扮するおげんさんの“弟”として浴衣姿で登場。(『おげんさんのサブスク堂』公式SNSより)

 

 そんな羽生は星野に問う。「おげんさん」から見て、星野源が持つ「闇」はどこまで深いのか。この問いに、星野は「生まれてきて、意識した瞬間にはもうそこにあって」と答えた。

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「たとえば学校とか幼稚園とかも含めていったときに、なんか輪に入れなかったりとか、いろんな人と話してても、自分はこれが普通だと思って話してることと、みんなが普通だと思ってることがちがくて。そこでやっぱり孤独感みたいなのを抱えるじゃないですか。そこで育っていく何かみたいなのがあって。それはずっと途絶えないっていうか」

 星野と羽生、共に「孤独」や「闇」を抱えているという2人。その言葉は共振する。

「重くなってツラくなる」表現者としての“孤独”

 たとえば、孤独を抱えた自身の表現が「孤独だなって感じてる方の耳にちょっとでもかすってくれれば」と羽生が語ったとき、星野は「だから、独りよがりのものを作っちゃダメだなって思うんだよね」と言葉を続けた。羽生がこれを聞き「それが重くなってツラくなるんですけどね」と応じると、星野は「そう、その繰り返し」と共感した。

2022年末の紅白歌合戦の舞台裏で、羽生から「本物だ!」と声を掛けられたという星野源 ©文藝春秋

 共振する2人の会話を聞いていた松重は「それが表現者としての魅力なんだよね」と語った。

「闇も見てる、でも現実もある、そして希望もあるっていうようなところにさ、その三位一体が魅力になって、その人がやってる表現、歌だったりスケートだったりとかっていうものに見入っちゃうっていう。それが根源のものじゃないのかな」

 内に抱える拭い難い孤独を表現の源としながらも、個人に閉じない。観客への回路を閉ざさない。しかし、その矜持は自らを押しつぶす重い枷ともなる。そこに表現者の魅力が宿る。2人の間で交わされた言葉を記述し直すと、そういうことになるだろうか。