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キリンの交尾を「へたくそ」と笑うな…122回マウントしても挿入できないオスがいたほど難易度が高いワケ

source : 提携メディア

genre : ライフ, ライフスタイル

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ですので、オスが立ち上がって前肢をメスの腰に掛け、その不安定な姿勢をしばらく維持してから挿入するということはたいへんなことだと思います。ということは、マウントした瞬間に挿入と射精を同時にしないといけなくなり、それまでに準備が必要になります。しかも、マウントしたからといって必ず挿入できるとは限らないのです。

縦長すぎる体型ゆえにうまく挿入できない!

私は当初、キヨミズは交尾に慣れていないのでうまく挿入できないのだと思っていました。が、よくよく観察していると交尾を含めた一連の行動にはどうやら規則性があるように思えました。他の動物園の人に聞いてみたり、野生のキリンの研究者にも聞いてみたりしましたが、個体差はあるもののやはり似たような行動が見られており、キリンが交尾に至るまでは時間がかかることがわかりました。

私が勤務していた動物園では夜はオスとメスは別の部屋で管理していたので、交尾できるのは日中にオスとメスを一緒にしている最長で7時間ほどだけです。2日にまたがってメスの発情が続いていることが多いので、交尾を観察できるのは1日目と2日目のグラウンドに出している時間のみとなります。その間の夜間は分けています(室内はグラウンドほど広くないため、室内で交尾するとケガや事故に繋がる恐れがあるのです)。

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その中で、キヨミズはいったい何回マウント(マウンティング、乗駕ともいいます。前肢を上げて相手に馬乗りになる行動)したと思いますか? 第4子の時の繁殖では2日にわたっての観察となり、トータルで213回ものマウントが見られました。

挿入できる確率は? 2日間で213回もマウントしたオス

キリンはオトナ同士で体が触れる位置にいることはあまりありません。しかし、メスが発情している時だけはメスの後ろにオスがくっつきます(追尾)。オスが追尾をしても、メスの発情が弱い時はオスがうっとうしくて逃げまくるのですが、発情の時はジッと止まって受け入れる(スタンディングといいます)のです。