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とろりと煮込んだ豚バラ軟骨にこだわりあり…小川町の立ち食いそば屋で味わう「元祖パイカ玉きしめん」が絶品だった

2023/09/12

genre : ライフ, グルメ

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「独立を認めてくれた豊しまのオーナーの山崎さんには感謝してもしきれません。このメニューは修業した味なのでどうしても提供したかった。でも自分で味の工夫を加えて少しずつ変化しています。きしめんの販売も始めましたし、新しい肉のメニューも始めました」と西村店主は熱く語る。それが「パイカ」を使った新メニュー「元祖パイカ」(500円)、「元祖パイカ玉」(590円)である。食肉の世界では豚バラ軟骨を「パイカ」というそうだ。

きしめんも。店の壁にはうまそうなメニューの紹介が並ぶ

 入口すぐ左にある券売機を眺め、新発売したメニューを探すとすぐに発見した。「元祖パイカ玉きしめん」(590円)の食券を買い、店の奥に進んでいき、さっそく注文してみた。そして注文したきしめんを作る間、西村店主から店に対する思いなどを聞くことにした。

入口すぐ左にある券売機
自分の味の道を追求してきたという西村店主

ラーメン屋、立ち食いそば屋で修業

 西村店主は今年50歳。ラーメン屋で10年、「豊しま」で4年間働いた。そしてモツ焼き屋などで数年以上掛け持ちで働いていた。

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 その間、豚肉の部位やその旨さ、見極め方、焼き方などを習得し、味の研鑽を重ねてきたという。そして2023年1月に「豊はる」をオープンした。

「自分で独立するのが夢だった。自分はどんな味を作っていきたいのか自問自答していた」という。そしてある一つの方向性がみえてきたという。それは「身近でうまい色々な部位の豚肉をそば・うどんともっと密接な関係にすること」だという。

 そんな話をしているうちに「元祖パイカ玉きしめん」が完成した。美濃焼の瑠璃紺の青色が映えるうつわに、たぬき、そして柑子色(黄赤色)の鮮やかな「ひたち農園」の奥久慈卵、紅緋色の紅しょうが、ねぎがのせられている。まさに彩り鮮やかな一杯だ。

「元祖パイカ玉きしめん」
「ひたち農園」の奥久慈卵、そして紅緋色の紅しょうが

つゆの味の奥行きがすごかった

 まず、つゆをひとくち。このつゆには今までに食べたことがない奥行きがある。訊ねると「パイカ」のエキスが入っているという。そばつゆに「パイカ」を炊いた汁を加えているのだ。これはうまい。ほんのりと生姜の味が香る。完成された味だ。そしてきしめんのつるつるした食感がたまらない。「パイカ」はほろほろと崩れ、コラーゲンリッチのトロっとした旨味が口一杯に広がる。まさか、「豊はる」でコラーゲンの大量補給ができるとは夢にも思わなかった。唇がコラーゲンでしっとりしている。

「このパイカを食べに女性たちがよく来店するようになった」と千秋女将が教えてくれた。