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「現代のデジタルカメラのセンサーは、非常に精度が高い。たとえば暗闇に向けてカメラを向けても、その中にある微妙なグラデーションを捉えることができる。また撮影後のレタッチ(修正)も、デジタルの方が圧倒的に便利です。だから僕的には『新しいデジカメにオールドレンズ』の組み合わせが良いと思います」

 さて、学生時代まではあくまで趣味、あるいは生活を記録するためだったカメラが、「仕事」の一環になってきたのは10年ほど前からのことだ。

ヌード撮影とコロナの関係

「僕のやっているメディアアートは、展示期間が終わると撤去されたり、物理的に壊れてしまったりする。後に残すには、写真か動画で撮影するしかない。なら、それを人まかせにしないで、自分で写真に残すようにしよう、と思ったのがきっかけですね」

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 今回の『晴れときどきライカ』にも、落合さんが自身のメディアアートを撮った写真が多数収録されている。

 また「文學界」に連載されていた期間は、コロナ禍の期間に重なる。

「緊急事態宣言の時の、昼間なのに人っこ一人いない秋葉原の写真が載っていますが、ああいう不思議さというのは今となっては忘れてしまいがちですが、やはり写真に撮っておいてよかった。

 また僕はもともと人をあまり撮らないんですが、コロナの間に、ヌードを撮るようになったのも、自分の何かが変化したのかもしれませんね」

ヌードの撮り方は、荒木経惟氏に学んだという

自分が良いと思うものを撮っていけば、その人らしさは出てくる

 現在、東京と京都のライカギャラリーでは、『晴れときどきライカ』に収録した写真の展覧会も開かれている。 

 最後に、これから写真を始めたい人に何かアドバイスがあるか、聞いてみた。

「みんな最初はドラマチックなもの、非日常的なものを狙いがちだと思うんです。でも、そういうところに意外と写真の面白さはない。僕は、あらかじめ『こんな情景が撮りたい』と狙うことはしないんです。たまたま目にした素朴なものを撮っている気がしますね。自分が良いと思うものを撮っていけば、おのずとその人らしさは出てくるんじゃないでしょうか」

晴れときどきライカ

晴れときどきライカ

落合 陽一

文藝春秋

2023年8月28日 発売