研究者、メディアアーティスト、経営者など多彩な顔を持つ落合陽一さん。そんな落合さんが、10年ほど前から本格的に写真に取り組み、写真展も開くほどの腕前ということはあまり知られていないだろう。初の写真&散文集『晴れときどきライカ』(文藝春秋)の発刊を機に、その独特の「カメラとの付き合い方」を聞いた。
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カメラとの出会いは9歳頃
そもそも最初にカメラに触れたのは何歳だったのだろう?
「9歳頃ですね。多分、父親か母親がビンゴの景品で当ててきたカシオQV-10あたりのデジタルカメラをもらって、遊びで撮っていたのが最初です」
その後、高校生ぐらいからオリンパスの一眼レフカメラを手にするようになり、ソニーのαシリーズ(ミラーレス一眼)を経て、20代半ば過ぎで行き着いたのがライカのレンズとカメラだった。
「ソニーもカメラ本体は軽くて取り回しがよく、気にいっていたんですが、レンズと組み合わせるとどうしても重くなってしまうのがネックでした。
その点ライカのレンズは、小さいのに性能が高い。明るくて精度が良いんです。その後ボディが薄くなったライカM10から入って、今はM11を主に使っています」
落合さんのこだわりは、オールドレンズ(フィルムカメラの時代に使われていた古いレンズ)を、新しいカメラに付けて使うことだという。
「デジタルの旗手」である落合さんが、「アナログの極致」であるオールドレンズを礼賛するのは意外な気もするが。
新しいカメラ+オールドレンズが良い理由
「オールドレンズの良さは、被写体の物質性がより強く感じられるところだと思います。たとえば光が滲んでいたり、ちょっとボケていたり、微妙なゆがみが出ていたり……そういうノイズみたいなものは、最新のレンズでは除去されてしまう。オールドレンズで撮っていると、急に光が差し込んできてハレーションを起こす、といったことがあるんですが、その偶発性が逆に面白い、というか」
もっともカメラ本体は「オールド」を使うわけではない。なぜだろうか。