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楽天カードマンでも、米倉涼子でもない…楽天・三木谷浩史の「テレビCM嫌い」を変えた“意外な人物”の正体

楽天カードマンでも、米倉涼子でもない…楽天・三木谷浩史の「テレビCM嫌い」を変えた“意外な人物”の正体

『最後の海賊 楽天・三木谷浩史はなぜ嫌われるのか』 #2

2023/09/11

genre : ビジネス, 企業

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 東京の中堅どころの私大を出た矢澤は、営業マンとして「駅前留学」で有名な英会話のNOVAに入社した。入社3年目のとき、自分の面倒を見てくれていたNOVAのマネージャーが楽天に転職した。矢澤は見捨てられたような気持ちになったが、1ヵ月後、そのマネージャーから「お前も来いよ」と誘われ、楽天に入った。2005年6月のことだ。

クルマも半額、カニも半額

 楽天に入社した矢澤の仕事は「ECコンサルタント」。ネット通販(EC)の楽天市場に出店する店舗からの「どうやったらネットで売り上げを伸ばせるか」という相談に乗る役回りだ。北海道から沖縄まで週の半分は全国を飛び回り、地方の中小企業経営者と知恵を絞った。

 矢澤が担当した店舗の中に名古屋に本社を置く「オークローンマーケティング」という会社があった。社長のロバート・ローチは学生時代に交換留学で名古屋の南山大学に来たことがあり、デンバー大学を卒業後、名古屋に戻ってテレビ通販のビジネスを始めた。

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 そのオークローンマーケティングが通販で細々と売っていたのが「ビリーズブートキャンプ」。米国出身の黒人格闘家、ビリー・ブランクスが米軍の新兵向け基礎訓練をベースに考案したエアロビクス体操のインストラクション・ビデオだ。

  

2000年代に大ヒットした「ビリーズブートキャンプ」(写真:Amazonより)

「さあ行こう!」「もう一回!」「グッジョブ!」

 ビートの効いた音楽とビリー隊長の掛け声に乗せられ、きついトレーニングを楽しく続けられるところがミソだ。

「これはいける!」と矢澤は直感。名古屋に飛んで行ってローチに掛け合い、楽天市場で大々的に売り出した。これが月に1億円売れるおばけ商材になった。あまりに売れたのでプロモーションで来日したビリー隊長が、当時は六本木ヒルズにあった楽天本社を表敬訪問したほどだ。この成功で「楽天市場に矢澤あり」と社内で認められるようになり、三木谷の目にも止まった。

 2011年の年末、31歳でペット用品のマネージャーになっていた矢澤は、三木谷に呼び出された。

「アリババが1日で1兆円売ったらしいぞ」

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