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「クルマも半額、カニも半額」
矢澤が案を出したド派手な楽天市場のテレビCMは、消費者の心を掴んだ。今や毎年恒例になっている「楽天スーパーセール」の始まりだ。あらゆるジャンルで「半額」の目玉商品を並べ、楽天市場の中で通貨として使える「楽天スーパーポイント(現在は楽天ポイント)」も大盤振る舞い。これまで楽天市場を使ったことのない人々がドッと押し寄せ、1日127億円を売る大成功を収めた。
三木谷もテレビCMが好きになり、川平慈英を使った「楽天カードマン」や米倉涼子を起用した「楽天モバイル」などの、ド派手な映像が楽天のテレビCMの系譜になる。
なぜ「楽天はダサい」のか?
楽天市場とアマゾンのサイトを比べ「楽天はダサい」という声を聞く。テレビCMも洗練されているとは言い難い。だがそこには三木谷なりの狙いがある。
「うちのサイトはニューヨークの五番街じゃなくて、アジアのバザール。スッキリしてないけど猥雑で、なんか面白いものがあるんじゃないかとワクワクする。かっこよくしなくてもいいんだ」
こうした大衆心理を楽天の中でいちばん理解しているのが矢澤である。臆面もなく「カニも半額」とやれる矢澤は、入社7年目、32歳の若さで営業統括の執行役員に抜擢された。以来、三木谷は矢澤を懐刀として常にそばに置くことになる。