子育ての失敗は、「過保護型」「高圧型」「甘やかし型」「無関心型」の4つのタイプに分類できる。 この4タイプには、非行少年の親のみならず、すべての親が当てはまるという。 各タイプがそのまま失敗というわけではないが、どのタイプであれ、行きすぎると「危ない子育て」となってしまう——。
ここでは、1万人を超える非行少年・犯罪者を見てきた犯罪心理学者の出口保行氏が、子育てにひそむ危険や注意点を解説した『犯罪心理学者は見た危ない子育て』(SB新書)より一部を抜粋。親から「高圧型」の子育てを受けた結果、特殊詐欺に手を染めてしまったトモヤの事例をもとに、「高圧型」の子育てが子どもにどのような影響を与えるのかを紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)
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高圧型の子育てとは?
高圧型の親は子どもに対して支配的で、親の言う通りにさせようとします。何かと束縛し、些細なことにも干渉します。従わない場合には罰を与えることが多く、「〇〇しなければ、こんなに大変なことになる」といった恐怖心をあおるのもその一例です。
学歴や就職先など、社会的評価につながる部分に関してはとくに干渉が強くなることが多いです。世間体を気にするのです。また、親自身が引け目に思っていることを子どもに投影し、補償しようとします。
子どもは親の顔色をうかがうことが常となり、自主的・積極的に物事に取り組もうとする意欲が育ちません。失敗したときは、「そもそも自分の判断ではない」と考えるので、他罰的になります。自分の存在を認められていないという思いが強く、自己肯定感が低いのも特徴です。
一方的に命令して、子どもの気持ちを無視
トモヤの父親は高圧型の典型でした。「~しなさい」と命令し、「~してはいけない」と禁止する言い方が高圧型を象徴しています。しかも、非常に一方的であることが問題です。トモヤの希望とは関係なく、父親の価値観にもとづいて物事が選択されていました。