子育ての失敗は、「過保護型」「高圧型」「甘やかし型」「無関心型」の4つのタイプに分類できる。 この4タイプには、非行少年の親のみならず、すべての親が当てはまるという。 各タイプがそのまま失敗というわけではないが、どのタイプであれ、行きすぎると「危ない子育て」となってしまう——。

 ここでは、1万人を超える非行少年・犯罪者を見てきた犯罪心理学者の出口保行氏が、子育てにひそむ危険や注意点を解説した『犯罪心理学者は見た危ない子育て』(SB新書)より一部を抜粋。親から「高圧型」の子育てを受けた結果、特殊詐欺に手を染めてしまったトモヤの事例をもとに、「高圧型」の子育てが、子どもへのマインドコントロールや教育虐待につながる可能性を紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)

写真はイメージ ©iStock.com

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マインドコントロールはどこでも起こる

 マインドコントロールはカルト的な集団で使われているイメージが強いと思いますが、その技術を学んだわけでなくともできてしまうものです。高圧的に接して命令し、罰を与えるなどして恐怖を与えればいいのです。噓を織り交ぜるとさらに強力です。 

 家庭の中だってじゅうぶん起こりえます。

 2020年、ママ友にマインドコントロールされた母親が5歳の子を餓死させたという事件がありました(福岡5歳児餓死事件)。

 これも、普通に考えれば「なぜ母親が、ママ友に言われたからと言って、自分の子どもにご飯を与えず餓死させるなんていうことができるのか?」と疑問に思うでしょう。

 ママ友は母親に対して「夫が浮気をしている」「他のママ友が悪口を言っている」などの噓をついて孤立させ、相談に乗るふりをしながら支配していました。母親が離婚すると「子どもが太っていると養育費や慰謝料がとれない」と言い、子どもたちへの食事を極度に制限させました。心理的拘束のもとで、母親は支配者の言うことを聞く以外できなくなってしまったのです。

恐怖を与えて動かすのは、いつか必ず問題が発生する

 この事件では、子どもを餓死させた母親は保護責任者遺棄致死罪に問われ(懲役5年)、ママ友の「支配」がなければこの事件は起こらなかったとして、ママ友は懲役15年の刑が確定しました。

 このママ友はマインドコントロールの知識を特別に学んだわけではないでしょう。