ただ、ターゲットとなる人物を孤立させたり脅迫したりすることによって支配しました。ここまで極端でなくとも、学校や職場などあらゆるところで、起こり得ることです。
高圧型の子育ても、一歩間違えばマインドコントロールになるおそれがあります。
「言うことを聞かないと、あなたの大事なものを捨てる」
「テストでいい点数をとらないと、ゲーム禁止」
そうやって、恐怖を与えて思い通りに動かすのはラクかもしれません。しかし、いつか必ず問題が表出します。
子どもの心を追い詰める「教育虐待」
高圧型の子育てと密接な関係があるのが「教育虐待」です。
教育虐待とは、親が子どもに対して実力以上の過度な期待をかけて勉強させ、その結果が芳しくないと、罵ったり、暴力を加えたり食事を与えなかったりするような虐待を言います。「子どものために」と言いながら、子どもをどんどん追い詰めていく。
近年、中学受験熱の高まりもあって、話題になることも多いですね。追い詰められた子どものSOSが、非行・犯罪としてあらわれる場合もあります。
「医大に行って、絶対に医者になれ」と、激しい教育虐待を続けていた母親が、娘に殺害された事件が2018年にありました(滋賀医科大学生母親殺害事件)。娘は医大合格のため9年間も浪人させられていたというのですから、母親の異常な執着がうかがえます。
娘は小学生の頃は成績優秀でした。母親は、娘が小さいうちから、医者になってほしいという気持ちが強く、高圧的に接していました。成績が期待を下回ると叩いたり、「バカ」と暴言を吐いたりしていました。
大学受験の頃になると、さらにエスカレートします。浪人中はスマホを取り上げ、自由時間をとらせないためお風呂も一緒に入るという徹底した監視ぶり。その後も、こっそり持っていたスマホの存在に気づくと、娘に土下座させたりしました。娘は束縛された生活から逃れるために、母親を殺害するしかないと思い込んだのです。
眠っている母親を刃物で刺して殺害後、娘はツイッターに「モンスターを倒した。これで一安心だ」と書き込んでいました。その後、遺体をバラバラにして河川敷に遺棄。ここまでする異様さはメディアで大きな注目を浴び、教育虐待についても話題になりました。
極端ではありますが、教育虐待が子どもを重大な犯罪にまで追い詰めた例です。
劣等感を子どもに補償させようとする親
なぜ、こんなに追い詰めるほど過度な期待・要求を子どもに押し付けるのでしょうか。