合計特殊出生率は38年で半分にまで減少……今、急速な人口減少に悩む国とはいったい? 世界情勢にまつわるさまざまなコラムで人気を博す伊藤智章氏の新刊『ランキングマップ世界地理 ――統計を地図にしてみよう』(筑摩書房)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
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人口が急増している国ランキング
合計特殊出生率は、15歳から49歳までの女性の年齢別出生率(年齢別の出生数を同世代の女性の数で割った値)の合計です。その国や地域で、一人の女性が生涯に産む子どもの数の平均を表します。その値が2.07を下回ると、その地域の人口は将来的に減少に転じますが、人口が急増している国では高い値を維持しています。
図2−1は、1980年における各国の合計特殊出生率を表した地図と上位10カ国の値です。アフリカのほぼ全域と、中東諸国で6以上の高い値が出ています。
栄養状態や衛生環境が悪い国では乳幼児死亡率(0歳から5歳未満で亡くなる率)が高く、特に生後1カ月までが死亡のリスクが最も高いといわれています。国連児童基金(ユニセフ)によると、生後1カ月以内に亡くなった子どもは約250万人(2017年)で、そのうち約90万人は生まれたその日に亡くなっています。
死因は出産時の合併症、肺炎などの感染症、下痢、マラリアなどです。出産時の合併症は、産前産後に専門家(医師や助産師)が診断することで重篤な事態を防ぐことができますが、後発発展途上国では約40%の女性が診断を受けないまま出産し、50人に1人が出産時に亡くなっています。