図表2-2は、2018年の合計特殊出生率です。1980年に高い値が出ていた中東諸国の数値が下がり、アフリカ諸国が依然高いままになっています。
豊かな産油国のイメージがある中東諸国ですが、1980年の時点では、国民への所得分配は十分ではなく、イスラム教徒特有の男尊女卑的な風潮もあり、合計特殊出生率が高い国が多くありました。病院などの医療インフラが整い、女性の教育水準が向上した現在、これらの国々の合計特殊出生率は大幅に下がっています。1980年に世界一だったイエメンは3.79、3位だったオマーンは2.88です。一方、アフリカ諸国では、数値は下がりはしたものの、依然として高い数値を維持している国が見られます。
韓国は急速に人口が減り続けている
一方で、合計特殊出生率が下がり、人口減少水準である2を下回る国も増えています。図表2−3は、合計特殊出生率が2を切った国を示した地図と、下位2カ国を示した表です。
合計特殊出生率が2を下回る国の数は、1980年は27カ国あり、最も低い国は西ドイツ(1.44)でした。2018年には79カ国に増え、最も低い韓国では1を切っています。
ヨーロッパではほぼ全域で2を下回っていますが、特に東ヨーロッパの旧社会主義国と南ヨーロッパで数値が低くなっています。EU加盟後、多くの人が西ヨーロッパ諸国に出稼ぎに出ていることも影響しているのではないかと思われます。長時間勤務や遠距離通勤など、家庭よりも仕事を優先せざるを得ない状況に置かれているのは、日本や韓国も同様です。
命の危険にさらされながらも多くの子どもを産まざるを得ない国と産みたくても産めない国。どちらも女性にとっては過酷な環境です。数値を下げる(上げる)ことだけを目標とするのではなく、どうすれば安心して子どもを産み育てられる環境を築くことができるのか、考えていきたいところです。
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