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ファンとして好きなホラー作品

――これまでに観たホラー作品の中で、影響を受けたものはありますか?

背筋 影響を受けたなんていうとおこがましいのですが、ファンとして好きな作品は本当にたくさんあります。あり過ぎて言い尽くせないのですが、映画なら『ノロイ』や『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』、小説だとホラー作家の三津田信三先生の作品や、小野不由美先生の作品が大好きです。

 2ちゃんねるのオカ板だと、有名どころでは呪いの箱を見つけてしまった「コトリバコ」や、猿に殺される夢が現実になる「猿夢」、殺人事件に巻き込まれていく「くっさい布団見つけたら大変なことになった」なんかを読んでいましたね。

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 最近の作品だと、作家の梨先生の作品はすごく好きです。小説にとどまらず、ホラー界隈ですごく活躍されている方で、私もファンの1人なんですよ。

好奇心からホラー好きに

――そもそも、背筋さんがホラー好きになったきっかけは何だったのでしょうか。

背筋 はっきりとしたきっかけがあるわけではないのですが、父が僧侶をしているのは影響しているかもしれません。小さい頃から生と死が身近にあったから、“死”や“死にまつわるもの”に恐怖を感じるより、「その先に何があるんだろう」と好奇心を持つようになったと言いますか。

――好奇心ですか。

背筋 不謹慎なのかもしれませんが、そうですね。『近畿地方のある場所について』のメインの登場人物である、ライターの背筋さんと小沢くんの2人も好奇心旺盛で、危険なことにもどんどん首をつっこんでいくのと同じです。

――「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」というドイツの哲学者・ニーチェの格言がありますが、背筋さん自身も登場人物の2人のように、好奇心が強すぎて危険な目にあった経験はあるのでしょうか?

背筋 ないですね。でも、ないからこそホラーが好きなのかもしれません。実際に危険な目にあったら、怖くてホラーが嫌いになってしまいますから。

 私は幽霊を見たことがありませんし、その存在を証明するのは科学的に難しいと思っているんです。幽霊って、実体がないものとして語られることが多いですよね。そして「霊を見た」という目撃情報と同じくらい、「霊の声を聞いた」という体験談もすごく多い。でも、音を音として届けるには、空気を振動させる必要があります。そのためには、発するモノ自体が質量を持っていないといけない。科学的な観点からすると、この時点で矛盾が生じているんですよ。

写真はイメージ ©iStock.com

 世の中にはリアリティのある怪談や体験がいくつもあります。ただ、それをいくら紐解いたって、幽霊の存在を証明することは不可能だと思うんですよね。科学的には矛盾している存在だから。

 それでも好奇心旺盛な私としては、現実世界では解明できないその先を知りたい。分からない、経験できないことだからこそ、少しでも溜飲を下げるために創作しているのかもしれませんね。