小説投稿サイト「カクヨム」で、ホラージャンルとしては異例の1400万PV（2023年8月30日時点）を叩きだしたWebホラー小説『近畿地方のある場所について』が書籍化され、8月30日にKADOKAWAより刊行された。
Web掲載時からネット上で「怖すぎる」と話題になっていた本作。雑誌・新聞記事、ネット掲示板のコメント、インタビューの書き起こしなどで構成された文章を読むにつれ、“怪異”の正体が明らかになっていく。フィクションをドキュメンタリーのように演出して表現する「モキュメンタリー」の手法によって、現実世界で本当に“怪異”が起きているかのような恐怖を感じられる。
著者の背筋さんはいったいどのようにして、ネットを騒然とさせた“怖すぎるホラー小説”を生み出したのだろうか。本人に詳しく話を聞いた。（全2回の1回目／2回目に続く）
※このインタビューは、ホラー小説『近畿地方のある場所について』の内容に触れています。未読の方にとってはネタバレになる可能性がありますのでご注意ください。
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不可解なコメントを書き込んだのは…
――雑誌や新聞、ネット掲示板などさまざまな媒体から“ある場所”にまつわる記録を集め、そこで頻繁に起こる不可思議な現象について紐解いていくWebホラー小説『近畿地方のある場所について』。ネット上で「怖すぎる」と話題になり、8月30日には書籍化されました。
背筋さん（以下、背筋） 書き始めた頃は、こんなに話題になるなんて想像していませんでした。書籍化のお話をいただいたときは、まだWebで連載中だったので「結末も分かっていないのに大丈夫？ 先走りすぎていない？」と正直不安になりました（笑）。でも、たくさんの方に読んでいただけて嬉しいです。
――小説では、各登場人物のさまざまな“不気味な体験”が綴られています。たとえば、第1話のアダルトサイトのコメント欄に投稿された不可解なコメントには、いきなりゾッとさせられました。
背筋 ある男性がよく見ているアダルトサイトで、特定の女優さんのコメント欄にいつも「お山に来ませんか。かきもありますよ」と謎のコメントがついている、というエピソードですね。いたずら心で、女優さんに扮して「おうちはどこなんですか？」と返信してみたら、実在する住所が返ってきて。その住所を調べてみると……という。
体験したものか、友人から聞いた話がベースに
――他にも、夜中に1人で読みたくないようなお話がたくさん掲載されていました。このような怖い話を、背筋さんはどうやって生み出しているのでしょうか。
背筋 ゼロから生み出しているものはほとんどないですね。私が体験したものか、友人から聞いた話をベースに書いています。
私自身は、“霊感”のようなものはありません。でも、「あれは何だったんだろう」と思うような不思議な体験はいくつかあって。たとえば、先程出た不気味なコメントのエピソードは、私が実際に体験したものをベースに書いたものです。
――実体験なのですか！ 詳しく聞かせてください。
