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背筋 以前、入り浸っていたゲームの攻略サイトがあったんです。そのサイトは、攻略情報の下にコメント欄がついている仕様でした。そこに「ここに来てください」というコメントと一緒に、番地までしっかり書かれた住所とフルネームが載っていたんですね。

 気になってそのフルネームをネット検索してみたら、Facebookのアカウントがヒットして。そのアカウントでも、攻略サイトと同じように「ここに来てください」という内容を延々と投稿しているんですよ。さらにGoogle Mapでサイトに書き込まれていた住所を入力してみたら、人が住んでいるかどうかわからないような廃墟を指していたんです。

写真はイメージ ©iStock.com

ダムの近く、廃れた神社にいた男性

――「きっといたずらだろう」と頭では思いつつも、怖い想像をしてしまいますね……。他にも、実体験をもとに書かれたものがあれば教えていただけますか。

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背筋 小説の中では、舞台となる「近畿地方のある場所」にダムがあって、その周辺で失踪事件や怪死事件が頻発します。それも、私自身の体験をベースにしているんですよ。

 もう10年以上前になるのですが、友人から「台風後のダムを見学しよう」と誘われ、ついて行ったことがあるんです。そのダムは人里離れたところにあって、その日の駐車場には、私たちが乗ってきた車しか停まっていなかったのを覚えています。

 ひととおりダムを見た後、「せっかくここまで来たから」と2人で周辺を散歩することにしました。しばらく歩いていると、本殿の扉は閉ざされ、社務所のガラスはホコリで曇っているような廃れた神社を見つけて。廃墟やホラーが好きな私はテンションがあがって、興味深くその神社を見て回っていたんですね。そうしたら……。

――何が起こったのでしょうか。

背筋 友人が鳥居の方を指さして、「人がいる」と言うんですよ。見てみると、40代くらいの男性が立っていて。見た目は、どこにでもいる普通の男性でした。でも、鳥居の下でずっと“気をつけ”のポーズをしていたんです。その様子がなんだか不気味に思えて、私たちの存在を気づかれる前に帰ろうとしたら……。

 突然神社の敷地に向かって、操り人形のような機械的な動きで何度もお辞儀をしたんですよ。上半身を90度に曲げて、キビキビ、カクカクとした動きで。それを1分ほど続けた後、その場を去っていきました。

 彼は、神社でお辞儀をしていただけです。特別変わったことをしていたわけではありません。でも、その場所が廃れた神社であったこと、動きに違和感があったこと、そして駐車場には私たちの車しかなかったことから、当時は「怖い」と感じてしまったんですよね。人里離れたダムなのに、車を使わずにいったいどうやってここまでやってきたのでしょうか。そして、あの動きはいったい何だったのでしょうか。

 他にも、小説に出てくる「恐怖感情を他者に伝える際の身体表現」というエピソードは、実際に私が大学で行った卒業研究がもとになっていますし、「呪いのシール」も実際の体験をもとに作っています。

――卒業研究も呪いのシールも、実話をベースにしているとは。