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 結局ペレスは自分を変化させられず、皆に「救助が来る」と信じさせた負い目もあり、自信を失い、リーダーの役割を放棄。彼はその後、雪崩に巻き込まれて死亡します。

極限状態では強権的なリーダーはいらない

 救助隊が来ないことをラジオで知り、ペレスが絶望してリーダーの役割を放棄したあと、自力脱出を主張していたナンドがなんとなくリーダーとして期待を集めていきます。

 しかし、彼はもともとリーダーとは程遠い資質と性格の持ち主でした。

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「私はこれまでの半生で、そのような役割を果たしたことがなかった。私は、いつだって腰が定まらず、流れに任せ、人のあとについて歩んできた。いまも自分がリーダーなんてとんでもない、という気分だった」(同書より)

 安易な楽観主義や、期待を過度に高めることは死につながると彼は理解していました。同時に、仲間もすでに極限状態だったことで、強権的なリーダーになろうとはせず、協調的に接しながら相手に動いてもらうことを心がけます。

「出発予定日が近づいてくるにつれ、私たち派遣隊の士気は上がり、任務成功への期待が高まっていった。だが、私はそういう見方に与くみしなかった」

「『あんまり楽観的にならないほうがいい』私は言った。『グスタボが言ったことを、覚えているだろう――斜面の高みから見ると、フェアチャイルド機は、氷河上のちっぽけな点だったと』」(ともに同書より)

 彼は一貫して仲間の淡い期待を退け、自分自身も安易な楽観主義に陥るのを懸命に防ぎました。「あと少しで助かる!」と思い込めば、現実がその期待を打ち砕いたとき、自分の心も死に引き寄せられてしまうからです。