飛鳥時代の“悲劇の皇族”有間皇子を生き返らせた『飛鳥昔語り』(清原なつの)。第二次世界大戦下、レジスタンスに身を投じる男女の青春『アルペンローゼ』(赤石路代)。文芸評論家・細谷正充さんの『少女マンガ歴史・時代ロマン 決定版全100作ガイド』(河出書房新社)を読むと、少女漫画家の想像力が及ばぬところは古今東西存在しないのでは、と思ってしまう。
「日本史なら戦国時代、世界史ならばアメリカ西部開拓時代は少女漫画とあまり相性が良くないんですが、恐ろしいことに、それでも探せば傑作が見つかっちゃう(笑)」
ありそうでなかった画期的切り口のガイドブックだ。『ベルサイユのばら』等「名作」をおさえつつも、それだけに偏らないよう気をつけた。漫画評論の世界で無視されがちなレディース・コミック掲載の作品も多く紹介されている。
100作の書影の本は全て私物。萩尾望都ら「昭和24年組」をリアルタイムで読んで育った。
「憶えているのは、樹村みのりさんの『菜の花畑』シリーズで、小さな女の子が、“自分もいつか死ぬの?”みたいなことを言う。当時、同じことを考えていたので衝撃を受けました。女の子を女子大生が抱きしめるシーンに救われた気分になって。少女漫画ってすげえな、と思いました」