「冷し紅しょうが天そば」を食べるため3度目の訪問
そしてその1週間後、またまた朝9時半過ぎに訪問して、前回おいしそうだった「冷し紅しょうが天そば」(510円)を食べることにした。到着時には天ぷらはほとんどなかったのだが、宮﨑店主はほんの40分位の間に、「かき揚げ」「紅しょうが天」「ねぎ天」「なす天」「舞茸天」などを作り終えた。しかも、秀逸な出来栄えである。また、薬味のねぎも丁寧に包丁で同じ大きさに切りそろえている。繊細な仕事ぶりはすごく好感が持てるところだ。
奥さんは黙々とおにぎりを作っている。「そばやのおにぎり」は海苔、あおさ、天かす、返しが入っていてなかなかうまい。「おにぎり」だけでもたくさん種類がある。
人気のメニューを訊いてみると「とり天そば」「かき揚げそば」「ネギ天そば」「春菊天そば」など。涼しくなれば「けんちんそば」が女性に人気だという。
「とり天そば」も食べたくて、結局4週連続で訪問
そこで、また1週間後、訪問し、「とり天そば」(510円)を食べてみることにした。午前11時、丁度揚げ立てに出会うことができた。鶏肉はもも肉を使っているのが特徴だ。アツアツだがしっとりと鶏の脂のうまみが口内に広がる。温かいつゆは冷たいつゆ同様やや関西風の仕立てである。宮﨑店主が京都出身、奥様の両親が愛媛出身ということで、薄口醤油と混合節の出汁の絶妙な味のバランスがなんともいえない。すべて飲み干してしまった。このつゆなら「けんちんそば」はうまいに違いない。
4週連続で「蕎麦たつ」を訪問することになった。宮﨑店主は丁寧かつ繊細な技術の持ち主だし、夫婦で作る味も関西風でなかなか秀逸である。まだ食べなければならないセットメニューが目白押しだ。天ぷらが3つのる「舞茸天そば」も必食である。
帰りながら周辺をロケハンしてみた。すると近くには「めん庵」という古い立ち食いそば屋があった。また以前は「六文そば処 浜松町1丁目店」「小諸そば浜松町店」「六花そばたべりゃんせ」なども営業していた。マンションも多く、ビジネスマンもそこそこいるが競合も多かったのだろう。ビジネスとしては厳しい環境なのだろうと思った。
宮﨑店主は「SNSなどで店の情報を発信することは苦手で、古風な人間だ」という。しかし、趣味のジョギングで鍛えた身体とストイックな感性が持ち前のようだ。アパレル時代に横浜にある一茶庵のそば打ち教室にも足繁く通って手打ちの技も習得したという。コロナ禍のなか、仕入れのそばに自分の手打ちそばを忍ばせて提供していたこともあったとか。
これだけうまいつゆ、そば、天種を提供できるのなら、閉店するのはもったいない。どこかでゆっくりと営業できる手打ちそば屋でもやってもらいたいと思う。
そこで、閉店してもまたどこかで宮﨑店主と奥さんが開業してもらえるように、うるさく応援していこうと画策しているわけである。この味を絶やさぬように。立ち食いそばファンの皆様にもお願いしたいところである。
INFORMATION
「蕎麦たつ」
住所:東京都港区浜松町1-2-17
営業時間:8:00~16:00
定休日:土日祝