原監督の巨人での勝利数はすでに「V9」の川上哲治元監督を超え、球団史上最多になっている。しかし昨年はBクラスに終わり、今シーズンも26日時点で3位と3ゲーム差の4位だ。
「このまま負けたままでは終われないという気持ちが相当に強く、引き際の形にこだわっている。年齢的に、巨人で監督をやるのは今回が最後。今年優勝していれば代表監督を引き受ける可能性はあったが、今の形ではプライドが許さないのだろう」(巨人の球団関係者)
井端氏にとっても、代表監督が1年で終わるのは都合がいい
最終的に選ばれた井端氏も、条件的には「若手の日本人代表監督」というNPBの構想には合致する。現役時代は「アライバ」の二遊間コンビで中日の黄金期を支え、13年のWBCでも活躍した。晩年は巨人でプレーし、読売とのパイプも持つ。指導者としても東京五輪日本代表のコーチ、U12日本代表監督を歴任した。
ただ歴代の日本代表監督と比較するとネームバリューでは見劣りし、スポンサーを納得させる人選とは言いがたいのも事実だ。栗山監督のように大谷と特別な関係があるわけではないことも“つなぎ”にとどまっている所以だろう。まずは来年のプレミア12までの采配で評価されることになる。
ただ実は井端氏自身も、次回のWBCまでの監督就任については躊躇する事情を抱えている。中日OBの1人はこう指摘する。
「井端は“ポスト立浪”の有力候補なんです。2021年に立浪和義氏が中日の監督に就任した際にヘッドコーチで呼ぼうとした経緯があるなど、中日内では井端の指導力や理論に対する評価は高い。立浪監督の契約が切れる来オフに“井端監督”が誕生する可能性は十分にある。本人もそれはわかっているはずで、代表監督が1年で終わるのは都合がいい。つまり暫定の代表監督就任は、NPB側と井端側の利害が一致しているんです」
もし井端氏が立浪監督の後を継ぐとすれば、代表監督の座は再び空席となる。その時、契約通りなら原監督はフリーになっている。
「読売は改めて原監督の擁立に動くでしょう。巨人が来年いい成績を残せれば花道になるし、優勝できなければ3年連続のV逸になり身を引くしかなくなる。いずれにしても今年よりは、はるかにタイミングがいい」(前出の球界関係者)
とはいえ、1年もたてば候補者たちの状況が一変している可能性は十分にある。まずは波乱含みの船出となった「井端ジャパン」を見守りたい。