大林洞で中国料理店を営む人に韓国に来た経緯を尋ねると、「1988年のソウルオリンピックの時に、中国では韓国の発展ぶりが話題になりました。特に韓国にルーツがあるわたしたちは望郷の念もあったし、コリアンドリームを夢見る人が多かったです」と話していた。
韓国にやって来た朝鮮族がまず集まったのは、大林洞の隣の加里峰洞だ。働き場所となる工場が多く、家賃も安いためだった。加里峰洞の再開発に伴って人々が大林洞に移動し、今の姿に至っている。
当初は中国にいる家族に送金するケースも多かったが、次第に家族を呼び寄せる人も増え、今では韓国に住む朝鮮族は52万人、帰化した人も含めると約80万人に上る。韓国で生活する外国人は213万人いるが、中国人と朝鮮族を合わせるとおよそ40%を占めることになる。
与党の代表が「中国人は健康保険にただ乗りをしている」と主張
朝鮮族や在韓中国人に認められている参政権も、保守層を中心に問題視する声が上がっていた。6月には、与党「国民の力」の金起炫代表が国会演説で、主要な項目の1つとして彼らの参政権を制限する可能性に言及し、波紋を呼んだ。
表向きの理由は「中国に住む韓国人には参政権が認められないので韓国でも同じようにする」という相互主義だが、「朝鮮族の多くは親中・親北なので野党寄りの人が多い。保守層は、投票権を持つ10万人の朝鮮族の票が野党へ流れることを嫌っている」(中道系新聞の記者)と言う。
韓国では2005年から、在韓外国人の中で永住権を取得し、その後韓国に3年間居住した外国人には、本人の意志があれば地方選挙にかぎって参政権を付与している。そして参政権を取得している在韓外国人は12万7000人のうち、朝鮮族と在韓中国人を合わせると10万人と言われている。
また、与党「国民の力」の金代表は、「中国人は健康保険にただ乗りをしている」とも主張した。中国が在中韓国人に与える恩恵よりも在韓中国人が韓国で受ける恩恵が大きいと主張し、不当であり不公平だと語気を強めた。
昨年の統計では、朝鮮族や在韓中国人に支給された健保は1人あたりで他の在韓外国人より2倍近く多いという結果が出ている。また、昨年の外国人を対象にした健康保険の財政も、中国人だけ赤字となっていた。
韓国の健保では外国人扶養者は居住期間に関係なく保険が使える。そのため、重病にかかった扶養者が韓国にやってきて治療を受け、そのまま中国に帰国するパターンが繰り返されていたという。