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博士の「奇妙な」結婚

 私生活では、病気を宣告されたころに知り合った女性と、1965年に最初の結婚をしている。その相手であるジェーン夫人は、ホーキングに生きる目的を与えてくれたという(『PLAYBOY日本版』1990年6月号)。彼女とは3人の子供にも恵まれた。ちなみに夫人は、別の男性と子育てや夫の介護で手助けしてもらううちに関係を深めたが、ホーキングはそれを認める。この奇妙な三角関係は後年、『博士と彼女のセオリー』という邦題で映画化もされた(2014年)。のちにはホーキングもまた、世話をしてもらっていた夫ある看護師と恋仲となり、やがて妻と別れて2度目の結婚をする。とはいえ、2013年に著した自伝のなかで彼は「2度の結婚は失敗に終わった」と振り返っている。

2度目の結婚相手エレイン・メイソンと博士 ©getty

 ホーキングは、ブラックホールのいわゆる無毛定理を説明するのに、ちょっとエッチでユーモラスなイラストを使うなど(『ホーキング、ブラックホールを語る』)、ジョークを好んだ。しかし一方では、人類の未来に警鐘を鳴らすシリアスな役割も担った。

博士から人類への警告

 昨年(2017年)のインタビューでは、人類はこのままだと、天体衝突、新種のウィルス、気候変動や核戦争、人工知能の暴走などにより絶滅の恐れがあるとして、危機に打ちのめされる前に、ほかの惑星への移住を目指すべきだと提言している(NHK・BSプレミアム『コズミック フロント☆NEXT』「ホーキング博士の提言 100年以内に宇宙へ 1」)。状況に対しては悲観的ではあるが、それでもホーキングは、人類の好奇心と知性を駆使すればきっとこの危機を乗り越えられると信じていた。その確信は、彼自身が難病を抱えながらも、常に新たな謎に挑み続けてきたことから来るものであったのかもしれない。

現代物理学のスター。享年76 ©getty