「太陽の塔」をデザインした岡本太郎 ©文藝春秋

 きょう3月19日より大阪・万博記念公園(吹田市)の「太陽の塔」内部の一般公開が始まる。美術家・岡本太郎(1911~96)が造形した太陽の塔は、1970年に開催された日本万国博覧会(大阪万博)のテーマ館の一部として建てられたものだ。岡本は、テーマ館のプロデューサーとして、コンセプトから演出まで展示にかかわるすべてを統括した。

 高さ70メートルにおよぶ太陽の塔は、万博会期中、丹下健三設計の「お祭り広場」の大屋根を突き抜ける形で建っていた。テーマ館は太陽の塔のほか、地下展示と大屋根に設けられた空中展示と3つの空間で構成され、来場者は、やはり岡本の手になる「地底の太陽」などが展示された地下空間を通って、太陽の塔の内部をエスカレーターで昇りながら観覧し、塔の腕にあたる部分から空中展示へと進んだ。太陽の塔の内部には高さ41メートルもの巨大オブジェ「生命の樹」がそびえ立ち、そこには大小さまざまな生物模型群が取りつけられ、原生生物から人類にいたる生命の進化の過程をたどることができた。岡本はこの「生命の樹」を、血管や神経系など生き物に必要な“血流”ととらえていたという(平野暁臣『「太陽の塔」岡本太郎と7人の男(サムライ)たち』青春出版社)。正面・頂部・背面と3つの顔を持つ太陽の塔は本来、内と外が一体となったひとつの生命体であったのだ。

塔の内部(2016年10月撮影) ©文藝春秋

 万博閉幕後、地下の展示空間は埋められ、大屋根は撤去された。太陽の塔の内部も閉鎖されたが、近年、見学ツアーが組まれるなどたびたび一般公開されてきた。そこへ来て今回、塔の耐震工事の実施と合わせ、万博終了後に行方不明となった「地底の太陽」や、「生命の樹」の生物模型群をそれぞれ復元するなどして、内部が常設公開される。生命体としての太陽の塔はいま、新たな血流を得て、48年ぶりに息を吹き返そうとしている。

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