すなわち、ロシアからのエネルギー自立を目指した脱炭素の加速策は、結果としてロシアリスクを中国リスクに置き換えるものとなってしまったのだ。経済安全保障におけるEUの脆弱性が、環境先進地域を自任する自らのグリーン政策によって露わになったのだ〉
要するに「脱ロシア依存」が「中国依存」を深めるというジレンマだ。
日本に求められているのは、脱炭素と脱中国依存の両立
日本が置かれた状況もまったく同様であると北村氏は指摘する。
〈電気自動車(EV)や風力発電に欠かせない重要鉱物についても、日本のサプライチェーンは脆弱だ。経済産業省の「重要鉱物に係る安定供給確保を図るための取組方針」によると、EVのバッテリーに欠かせないリチウムは、約55%を中国からの輸入に依存している。EVのモーターや風力発電タービンの生産に不可欠なレアアース(希土類)も、中国からの輸入が約60%を占めている〉
「中国依存」のリスクは、中国が2010年に尖閣諸島沖の中国漁船衝突をきっかけにレアアースの対日輸出停止に踏み切ったケースからも明らかだ。
ここで北村氏が提唱するのが、「グリーン経済安全保障」だ。
〈野心的な脱炭素目標の一方で、脱炭素を巡る技術や製品の国産化、資源のサプライチェーン強靭化は追い付かず、中国依存が問題化している。今、日本に求められているのは、脱炭素と脱中国依存の両立、すなわち「グリーン経済安全保障」(グリーン経済安保)と言うべき政策だ〉
「文藝春秋」2023年11月号(10月10日発売)、および「文藝春秋 電子版」(10月9日公開)掲載の「グリーン経済安保を脱中国依存で進めよ」で、北村氏は、一歩先を行く欧州の「グリーン経済安保」政策を解説し、その上で、日本が進むべき方向を示している。
グリーン経済安保を脱中国依存で進めよ