「慶應は歴史がありますから、OBも多い。資金面も含めて、全面的にバックアップしてくれるのです」
慶應義塾高校野球部の上田誠前監督は、そう語った。
この夏の甲子園、107年ぶりの日本一に輝いた、神奈川の慶應義塾高校(塾高)。森林貴彦監督をはじめナインらは「高校野球の常識を覆す」をテーマに掲げていた。坊主頭を強制せず、部訓である「エンジョイ・ベースボール」の姿勢を貫く。それはいまだに軍隊風の“伝統”の残る、高校野球界の常識を覆す快挙だった。
引退後に入会する日吉倶楽部の会員は、現在約1600人
実は塾高野球部の快進撃の裏には、ある組織の力があった。上田氏が「バックアップしてくれる」と言及しているのが、野球部のOB会「日吉倶楽部」だ。この夏、塾高野球部に密着していたノンフィクションライターの柳川悠二氏が、知られざるOB会の秘密に迫ったレポートを、「文藝春秋」2023年11月号(10月10日発売)に寄稿している。
塾高野球部には毎年30から40人の生徒が入部する(今夏の総部員数は106人)。彼らが引退後に入会する日吉倶楽部の会員は現在、約1600人にもなる。年会費は1万円で、集まったお金は主に野球部の支援に回される。
集まった寄付金はグラウンド周辺施設の整備や甲子園滞在費に使用
柳川氏の取材によれば<今春のセンバツ出場時、塾高の同窓会と日吉倶楽部が連名で募った寄付金は3739万円。今夏は目標金額6000万円のところ、約8000万円が集まった。寄付金は野球部だけでなく、応援指導部、吹奏楽部、慶應女子高校のバトン部などの甲子園滞在費にも充てられた>という。森林監督は日吉倶楽部の存在をこう語った。