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「派閥があるとしたら、うちの恥」

「うちの娘と対立している飯島が派閥を作っていると(文春の質問状に)書いてあったら、飯島に説教するのは当たり前でしょう。派閥があるとしたら、うちの恥。文春さんだって自分の社内に派閥があったら恥ずかしいと思いませんか。あなたたちはうちの会社というものをわかっていないんです。うちはジュリーが生まれたときから、事務所がちゃんとうまくいったら跡継ぎにしなきゃいけないと思っていました。少なくとも3カ国語、4カ国語は読み書きができるようにしているし、小さい頃からミュージカルを観せてきた。

 どんな派閥関係があるのかと聞かれても、私には派閥ということ自体がわからない。もっと言うとファンには派閥なんて関係ないんです。ファンは事務所じゃなくタレントについていく。そうじゃなければなんで35年間マッチにファンがついてきているんですか」

 部屋を出て飯島氏に連絡を取りにいった男性が戻ってきた。メリー氏が「どうした? 飯島」と訊ねると男性は「10分ぐらいです」と答えた。

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「どうぞ飯島に取材して」

 飯島氏の到着は呼び出しから30分ほどが経った頃だった。色の白い、ほっそりとした女性が俯き加減で会議室に入ってきた。彼女こそSMAPの育ての親である飯島氏だ。

「お世話になってます、と(文春に)言うのはおかしいですね。おはようございます。初めまして、飯島と申します」

 意に染まない表情で名刺交換をする飯島氏。押っ取り刀で駆けつけたものの内心は困惑しきっていたに違いない。飯島氏は我々の右前、メリー氏の正面に座った。2人の距離は数メートル。裁判長と被告人席の位置取りだ。スタッフや記者はもう傍聴席にいるようなものだった。

 そしてメリー氏はこう言った。

「どうぞ飯島に取材して。私との対立関係を聞いてください。どういうことで対立してるのか」

 記者が派閥問題について単刀直入に質問すると、飯島氏は真剣な表情でこう答えた。

「私も大変困ってまして、本当に何とかしていただきたいなと思っているんです。伸び伸びとやらせていただいているので、こういう風に言われてしまっているのかなとは思うんですけれど……。私も被害に遭っている立場で、それはジュリーさんもそうだと思います」

「だって、踊れないじゃない?」

 嵐とSMAPの共演が少ないことについては、「別に、意味というのはないと思うんですけれども……」と、くぐもった声で答えた。

 その瞬間だった。

「だって、踊れないじゃない?」

 それまでジッと飯島氏を黙って睨みつけていたメリー氏が、堰を切ったように語り始めたのだ。

「だって(共演しようにも)SMAPは踊れないじゃないですか。あなた、タレント見ていて踊りの違いってわからないんですか? それで、そういうことをお書きになったら失礼よ。(SMAPは)踊れる子たちから見れば、踊れません」

 メリー氏はここから飯島氏およびSMAPを徹底的に否定していく。

「この人(飯島氏)はSMAPが長すぎているのかもしれませんね」

「悪いけど私、飯島に踊りを踊れる子を預けられないもの」

「文春さんがはっきり聞いているんだから、対立するならSMAPを連れていっても今日から出て行ってもらう。あなたは辞めなさい」

「この人(飯島氏)なんて偉そうに派閥なんて言っているけど、じゃ、派閥の子の名前を言ってごらん?」

「もしジュリーと飯島が問題になっているなら、私はジュリーを残します。自分の子だから。飯島は辞めさせます。それしかない」

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トップは「近藤真彦です」

「うちのトップはマッチです。SMAPじゃありません。失礼なこと聞かないでください」

 われわれ記者に語りかける形だがメリー氏が追及の手を緩めることはない。飯島氏はずっと下を向いている。そしてついに直接こう問い質したのだった。

「飯島、うちのトップは誰!?」

 メリー氏はまさに“踏み絵”を迫ったのだ。飯島氏は下を向いたまま間髪を入れず、こう答えた。

「近藤真彦です」

 このときの、肩を落とした飯島氏の姿が忘れられない。大勢の前でプライドを踏みにじられ、腸が煮えくり返る思いだったに違いない。

『ジャニーズ女帝』メリーさんに叱られた」は、文藝春秋「2021年10月号」と「文藝春秋 電子版」に掲載されています。