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オダギリジョーの気になる答えは…?

オダギリ いやいや、どうなんですかね(苦笑)。「映画」というものに夢を見ていた世代は、きっと僕らが最後なんでしょうね。若い世代は映画に期待なんかしていないでしょう? 映画に夢を見ていないはずですよ。いろいろなメディアがあって、いろいろな環境でいろいろな情報を得られるこの時代に。それこそ映画を早送りで観たりするわけですから。

 僕らは映画に対して敬意や愛情を抱いてきたけど、もうそういう時代ではないんじゃないですか。映画にこだわりを持って、映画にしか出ないという俳優はおそらく二度と現れないでしょう。映画に対する人々の気持ちが大きく変わってしまったんです。僕もいまは映画を中心にして仕事をしていきたいという気持ちはありません。以前は映画にしか出たくないという考えでしたけど、いまはむしろ映画がひとつのアウトプットとして試されているタイミングなんじゃないでしょうか。

映画が最良のアウトプットだとは考えていない?

――つまり映画はアウトプットとして上位ではないかもしれない、と。それはオダギリさんにとって? それとも世間一般として?

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オダギリ 一般的な感覚として、ですよね。まあ僕も、映画が最良のアウトプットだとは考えていません。寂しいですけどね、そうなってしまったのは。だからといって、他に表現の場にふさわしいメディアがあるかといえば見当たらない。戦後に映画が最盛期を迎え、その後テレビに勢いを奪われてしまったように、いまは配信やSNSなどの登場でさらに細分化が進んでいます。いろいろな表現の場がある中で、それでも映画にはやりたいと思える場所であってほしいですけどね。

――もしオダギリさんが映画に夢を見ていた最後の世代だとすれば、それは悪い時代に生まれたなという感覚ですか? それともギリギリ間に合ってよかったという感覚ですか?

オダギリ それぞれの世代の人たちが「いまの若い奴は」と言うし、「俺たちの若いころはよかった」と言いますよね。だからすべての人たちがいい時代にいい生き方をしているんだと思いますよ。その時代がどうであれ、その人たちなりに楽しく、懸命に生きているんだろうなと思うんです。

 僕は僕で、日本映画のいい時期を経験できてよかったし、その後の長く続く不況を経験できたこともよかった。それを経験していない若手も、彼らなりにいい生き方をしていると思うので、そこに大きな差はないのかもしれません。それぞれの立場から芸術や文化を濃密にしていくことができればいいなと思うだけです。