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丸1日の譲渡会で申し込みは1人だけ…猫好きの人たちが「譲渡のハードル」をあえて高くする本当の理由

source : 提携メディア

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1週間は「猫の様子」をLINEで報告する義務が

きちんとした譲渡のハードルは高い。各動物愛護団体が独自の基準を設けていて、例えば高齢者は「譲渡不可」となるケースが少なくない。いまや飼い猫の寿命は20歳以上になるため、飼い主の寿命を超えてしまったり、高齢や病気などの事情で飼育が難しくなったりすることがあるためだ。

年齢などのハードルをクリアしても、譲渡してもらえるとは限らない。

「あまみのねこひっこし応援団」の場合は、里親希望者が「申し込み」を入れると、スタッフから具体的な説明を受けることになる。その際、スタッフは飼い主の“人となり”を見る。面談を通じて、「この人に猫を託せる」とスタッフが判断すれば、後日スタッフが直接里親の家に猫を届ける。それから一週間を目安にトライアル(試し飼育)を行う。その間、里親は毎日猫の様子をLINEで報告しなければいけない――。

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それを聞いて正直、私は面倒だと思った。本当にその猫が好き、飼いたいと思えなければ、やっていられないだろう。

保護猫は「猫エイズ」をもっていることがある

しかも、保護された猫は病気をもっていることがある。この日、同団体では8匹中、6匹の猫がエイズもち。猫の前にぶらさがったプロフィールを見ながら、それについて尋ねる人を時折見かけた。

「“FIV陽性”ってなんでしょうか?」

「猫エイズのことです。人間のエイズとは全く違うものですよ」と、神坂獣医師が答える。

「治療が必要なんでしょうか?」
「治療は必要ありません。現段階では自分の免疫で抑え込んでいる状態、キャリアといいますが、実は飼い猫になると生涯発症しないケースが多いんです。ほとんどが寿命を全うできますよ。気を付けるのはストレスだけですね」

それでも自分が飼うとなれば、ひるむだろう。健康な猫を飼いたいという気持ちになるかもしれない。

譲渡会が始まってしばらくは、ただ猫を見るだけ、触るだけの人ばかり。だが、2時間経過する頃、ようやく「申し込み」が入った。40代女性とその母親が、エイズをもち、ちょっとやんちゃな「ハントくん」という猫に申し込みをした。今、飼っている猫の遊び相手に迎えたいという。