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丸1日の譲渡会で申し込みは1人だけ…猫好きの人たちが「譲渡のハードル」をあえて高くする本当の理由

source : 提携メディア

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きちんと責任もって飼育できる人を見極めなければ、それは新たな殺処分の種になってしまう。譲渡は、する側とされる側で信頼関係が築けるかどうかが重要ということだ。

この日、女優で愛猫家として知られる川上麻衣子さんも来場していた。川上さんは猫好きの人たちが交流できるウェブサイト「にゃなかTOWN」の運営や、一般社団法人「ねこと今日」の代表を務めている。

声をかけると気さくにインタビューに応じてくれたので、保護猫や殺処分についての思いを聞いてみた。川上さんも、「結局は猫よりも、人と人とのつながりが終着点ではないか」という。

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「人と猫が共生するには、猫好き、猫嫌いという分け方ではなく、両方の意見と力が必要だと思います。それに保護猫に関するボランティアは、意外と猫嫌いの人も協力的なんですよ。むしろ猫好きには『かわいそう』という視点でできないことがあるけれども、猫嫌いの人のほうが猫がいなくなってほしいから(笑)、現実的にできることを進めてくれたりもします」

猫は「私たちはどう生きるか」を教えてくれる

18歳の時から、当たり前のようにそばには猫がいた。

「これまで5匹の猫を看取りました。私にとって猫は、命を使って生きるとはどういうことかを教えてくれた“師匠”だと思っています」

そんな川上さんの言葉を聞いて、一列に猫を並べて、好きな猫を選んでいくという人間のおこがましさを感じた。できるなら新しい里親に譲渡される猫の意見も聞いてみたいところだ。中には人に好かれても、「もらわれるのはいやだな」と思っている猫もいるだろう。

動物愛護管理法の基本原則は「人間と動物が共に生きていける社会を目指す」こと。好き嫌いでなく「共生」という視点で考えると、自分にできることがクリアに見え、案外猫から学ぶこともあるのかもしれない。

ちなみに私が猫にまつわる記事を書く時、いつも猫好きな人の熱意に巻き込まれて、通常の仕事より時間と労力がかかる。毎回「やらなければよかった」と思う。けれども書き終えると、ほかの記事とは違う反響があるので、やっぱりやめられない。だから猫好きでもないのに、こうして取材をし、記事を書く。その時、猫から「お前はなぜ、今の仕事をしているのか」と、問われているように感じる。