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丸1日の譲渡会で申し込みは1人だけ…猫好きの人たちが「譲渡のハードル」をあえて高くする本当の理由

source : 提携メディア

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「脱走が一番怖いんです」

早速、ハントくんを今日まで預かっていたボランティアさんと、ベテランスタッフの2人が面談を行うことになった。

なお、神坂獣医師に面談を行う際に重視することを尋ねると、「猫が病気になった時に治療できる、平均的な経済力があるか」と「こちらがお願いする脱走対策をしてくれるか」の2点を挙げた。

面談は穏やかに進んでいたが、女性宅に「屋上がある」と聞き、スタッフの顔が曇った。

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「屋上には猫が脱走しないような対策が設けられているでしょうか?」

スタッフが尋ねると、女性はこう答える。

「一応、柵はあります。ただ、以前それを飛び越えて隣の家に猫が行ってしまったことがあって……」

女性が肩をすくめる。それに対し、「あまみのねこひっこし応援団」のスタッフは姿勢を正した。

「脱走が一番怖いんです」

ピリッとした口調で続ける。

「自分の縄張りじゃないところで外に出てしまうと、猫はパニックになります。突然道路に飛び出して交通事故が起きるかもしれませんし、もう戻ってこないことあり得ます。大変面倒ですが、私たちがハントくんをお届けするまでに、物理的な脱走対策をお願いすることはできますでしょうか?」

「ケージの購入をお願いできますか?」

“困った”というように、40代女性とその母親は顔を見合わせる。すでに2匹の猫を飼っていて、これまで無事にやってきたんだから、と言いたいようにも見える。しかし女性はしばらくすると、「わかりました」と言った。

続いて「ケージ」を購入する必要があるのか? と、尋ねる。今は家の中で放し飼いにしているため、ケージを使っていないそうだ。

「そうですね、すでに猫を飼われている場合は、最初はケージ越しに猫同士が対面する形がいいと思います。ケージの購入をお願いできますか?」

スタッフは言う。女性は「探せばあるかなあ」とつぶやいた。

また、スタッフは「ハントくんがもつエイズを、女性の飼い猫に感染させる可能性がゼロではない」ことも告げる。