コロナ禍で孤独を感じ、犬や猫を飼う人が増えている。ペットの存在は、生活にうるおいを与えてくれる。

 一方で、飼いはじめたものの面倒を見切れなくなって保健所に「引き取ってほしい」と持ち込んだり、路上に遺棄されるケースも急増している。不妊手術を受けずに捨てられた猫が子どもを生み、問題になっている地域もある。

「困ったら東京の杉並の先生に」

 ボランティア団体などが遺棄されたペットを保護して引き取り手を探す譲渡会などを開いてはいるが、保護したあとの治療や日々の世話の負担は重い。これらの活動や啓蒙もあって、1989年には100万頭を超えていた殺処分も2019年には3万頭ほどまで減少している。

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 そんなボランティア活動の人たちの間で「困ったら東京の杉並の先生に」という言葉が合言葉になっているという。

太田快作氏 ©積紫乃

 彼らが頼る“杉並の先生”とは、獣医師・太田快作氏のことを指す。

 太田氏は東京都杉並区にあるハナ動物病院の院長で、「動物に関する依頼は断らない」と明言しており、野良犬猫の保護グループや飼い主から絶大な信頼を寄せられる駆け込み寺のような存在だ。

太田快作氏 ©積紫乃

必須科目だった「外科実習」に異議を唱える

 太田氏が信頼を寄せられる理由の一端が、学生時代のエピソードにも表れている。

 太田氏は高校2年生のときに将来の目標を獣医師と決め、北里大学獣医学部に入学した。

 そして大学在学中、太田氏は前例のない行動に出る。必須科目だった「外科実習」に、真っ向から異議を唱えたのだ。外科実習とは生きた動物を実際に手術する授業で、対象の動物は実習後に安楽死処分になる。

 動物を救うために獣医師を目指しているのに、目の前の動物を殺していいのだろうか。そんな疑問をぶつけても教授たちは取り合わず、「外科実習が必要なのは当然」という態度だったという。