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動物たちの命を助ける責任

 ただ太田氏は自らの行為を「善意」だとは考えていない。むしろ「責任」に近いものだという。

「予備校に通ったり、大学で勉強する中で、私たちは親や国のお金を使って獣医師の国家資格を手に入れました。決して自分の努力だけで今の立場にいられるわけではないと、認識する必要があると私は思います。世の中には、どれほど希望しても大学に行けない人だっている。それに私たちが獣医師として生活できているのは動物たちのおかげじゃないですか」

太田快作氏 ©積紫乃

 自分が勉強する環境を作ってくれた人が自分の周りにいたことは、運でしかない。その環境に助けられて獣医師になった自分には、救える限りの命を救う責任がある、と太田氏は考えている。

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決して動物を見捨てないという強い信念

 太田氏は「想像力」という言葉をよく使う。

「私は妄想好きなので、犬や猫たちの気持ちを考えてしまうんですよね。飼い主に遺棄されて、保護されても引き取り手がすぐに現れる子もいれば、選ばれない子もいる。ケージの中で10年過ごす子は、いったいどんな気持ちでいるんでしょう。犬の10年は僕らの40年。野良猫だって、路上で本当に厳しい暮らしをしている子たちがいます。自分は何も悪いことをしていないのに、そんな生活を強いられている犬や猫の気持ちを想像してしまうんです」

太田快作氏 ©積紫乃

 そして太田氏を動かすもう1つの理由は、「犬や猫を助けようとする人たちの努力を目にしてきたから」だという。

「ブログやSNSで発信して、クラウドファンディングで資金を集めて活動している人たちもいますが、それはほんの一部。私の病院に来る人の9割は、目の前で苦しんでいる犬や猫を見捨てられずに家に引き取って世話をして、治療代や手術代も自腹を切っている人たち。彼らの努力を見たら、私もできることをやらなければと思うんです」

 診療中の太田氏は犬や猫に優しい声で語りかけ、飼い主に丁寧に状態を説明する。しかしその柔らかい物腰の奥底には、決して動物を見捨てないという強い信念が潜んでいる。