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丸1日の譲渡会で申し込みは1人だけ…猫好きの人たちが「譲渡のハードル」をあえて高くする本当の理由

source : 提携メディア

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そう言って笑う。長い間、決まらなかった子(猫)の里親が決定した時は、自然と拍手が起きるのだという。そう、猫好きな人のエネルギーはすごい。

ブースの前に出てお客さんの隣に立ち、ひときわ熱心に接客していたのは、梶澤恵子さん。「一匹の里親を決めたら、また新しい一匹を保護できて、殺処分から救えますから」と開催前に意気込みを語っていた。梶澤さんはペットショップで働いた経験をもち、現在は動物病院で勤務しているというだけあって、さすが接客が板についている。

「どんな猫をお探しですか」「ブースの裏で抱っこもできますよ」

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にこやかに話しかけながら、訪れた人の不安や要望を聞き出している。猫を飼えない人には、里親が決まるまでのボランティアを勧めている。なるほど、それはいいアイデアだと思った。

「保護犬・保護猫の譲渡」を名乗る悪質商法もある

熱心に猫を見つめる来場者の中には「飼っていたペットが死んでしまって……」という人がちらほらいた。「新しいペットを迎えたい」と考えた時、「保護猫」が選択肢にあがり、今日ここに来たというわけだ。

ペットショップで犬や猫を「購入する」と、保護した犬や猫を「譲渡してもらう」は具体的にどう違うのだろうか。

費用は譲渡のほうがおさえられる。ペットショップでは購入にかなりのお金がかかるが、譲渡の大半は数万円だ。猫に対して値段はつかず、譲渡するまでにかかった餌代やワクチン接種、ウイルスチェックなどの医療費の一部を譲渡対象者に請求するケースが多い。「あまみのねこひっこし応援団」では、2万数千円から3万円弱という。

ただし、ペットショップの売れ残りやブリーダーの繁殖犬や猫を「保護猫」「保護犬」と呼ぶ業者もいる。

「“保護犬・保護猫の譲渡”という名前を使い、犬猫自体に値段はつけなくても、抱き合わせでフードを一緒に購入する必要があったり、保険に入らなければいけなかったり。そういったものは本来の譲渡ではありませんので注意してください」(あるボランティアさん)