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「いやもう腹が立って腹が立って。腹が立つと、私は、問題の枠組みを変えようとするんです」
現行の製造方法だと、完成品の価格は原材料費の50倍もかかる。マスクはロシアからの帰国便のなかでコンピューターを取り出し、コスト削減を考えるべく、スプレッドシートで計算をはじめた。そして「これくらいのロケットなら、我々にも作れると思うんだ」と、同行した仲間に見せた(その中の1人は後にNASA長官となった)。
スプレッドシートには、マスクが専門書をぜんぶ借りて勉強した成果が表れていた。数字を確認した仲間は「まいったな」と驚いた。そして、客室乗務員に酒の追加を頼んだ。
とはいえ、ロケット会社を立ち上げようとマスクが心に決めたとき、友だちはみな、やめておけと忠告してきた。マスクのことを真に思ってのことだった。
ロケットの“爆発シーン”を集めた動画を見せられた
「おいおい、『ロシア人にばかにされた』がどうして『打ち上げ会社を作る』になるんだよ」と、仲間はいさめた。彼は“ロケットの爆発シーン”を集めた動画を作ると友だちを集めて、マスクを囲んで思いとどまらせる会を催した。
「ロケットが爆発するシーンをたくさん見せられました。こんなことに乗りだしたらお金がいくらあっても足らないぞと言いたかったのでしょう」
しかし、リスクが大きいという指摘は、マスクの場合、むしろ決心を後押しするものだった。マスクは、リスク大好き男だからだ。
会社の呼び名はスペースXとした。マスクの大好きな文字も入っているし、覚えてもらいやすい。チーフエンジニアはマスクが務めることになった。