コンクリートなどで固められることはなく、素掘りの状態だ。地層がくっきりと見え、ラインが美しい。目の前の光景に圧倒されて思わず「うわぁ~」と声が漏れた。
いつまでも眺めていたいが、隧道の先も気になる。10メートルほどの短い隧道なので、懐中電灯がなくても中心部まで明かりが射し込んでいる。ワクワクしながら隧道を抜けると、再び草むらになった。
今となってはただの草むらにしか見えないが、地面はフラットだし大きな木は生えていない。この草むらがかつては道であり、地域の人たちに利用されていたのだろう。そんなことを想像しながら探索する時間は、とても楽しい。
さらに進んでいくと、今度は前方に切通しが現れた。切通しとは、山を削って造られた道のことで、隧道と違って天井がない。隧道を掘るほど山や丘の高さのない場合は、開削され、切通しになることが多い。
左右に切り立つ壁は、ここに道を通すために削り取られたことを、如実に表している。道は使われなくなると徐々に自然に還っていくが、隧道や切通しというのは、道の痕跡を後世にまで残してくれる。シャープに削り取られた切通しからは、ここに道を切り開いた先人の苦労までもが伝わってくるようだ。
切通しを過ぎると、山の斜面が崩れてしまったようで、道を認識できなくなる。竹林をくぐり、なんとか真っすぐ進んでいく。すると、2つ目の隧道が見えてきた。倒れた竹によって少し隠れてしまっているが、山の中に突然現れる隧道に、興奮を隠せない。
1つ目の隧道との違いは、入り口が小さいことと、真っ暗で出口が見えないことだ。相変わらず地層のラインが美しい。こうした隧道は住民の手造りであることが多く、極力地形を活かして掘りやすい形に掘るため、形はいびつであることがほとんどだ。
明かりが見えないため、これは長い隧道なのかと色めき立ったが、入るとすぐに真相が明らかとなった。入り口から5メートルほどの地点で、隧道全体がコンクリートで塞がれていたのだ。