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下村博文元文科相が文藝春秋を提訴 森喜朗元首相に手渡そうとした「疑惑の紙袋」を巡る奇妙な弁明

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 自民党の下村博文元文科相(69)が、月刊誌「文藝春秋」の記事で名誉を毀損されたとして、ノンフィクション作家の森功氏と文藝春秋を相手取り、慰謝料など1100万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。10月17日に下村氏が記者会見を行い、東京地裁に訴状を提出したことを明らかにした。

提訴したと発表する自民党の下村博文元文科相(10月17日午後) ©時事通信社

「秘書に任せてますので覚えてません」

 下村氏が名誉を毀損されたと主張しているのは、現在発売中の「文藝春秋」11月号及び「文藝春秋 電子版」に掲載した「森喜朗元首相へ下村博文元文科相が持参した疑惑の紙袋」である。森功氏はこの記事で、自民党安倍派(清和政策研究会)の会長代理だった下村氏が、7月6日に東京・赤坂にある森喜朗元首相のプライベートオフィスを訪ねた際の様子を詳報。関係者の証言によれば、下村氏は森元首相に土下座をした上で、安倍派の会長に就任するために、薄茶色の紙袋を手渡そうとした。森功氏は記事の中で、下村氏が次のように語ったと綴っている。

〈「2つ入っています。2000万あります」

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 森の怒気は呆気に変わった。

「君は、何というバカなことをするんだ。清和会の会長を2000万円というそれだけの金額で買えるとでも思っているのかね。もう帰ってくれ。これ以上ここにいたら、俺はこのことを人に言うぞ。おい、お帰りだ」〉

 結局、下村氏は紙袋を持ち帰り、会長就任は叶わなかった。

 下村氏は10月17日の会見で記事の内容を「事実無根」と否定。同日付で公開された産経新聞電子版の記事によれば、記者団に対して「(森功氏の取材に対して)明確に否定した部分は書かれなかった。最初からストーリーがあったようだ」と語ったという。

 だが、森功氏と文藝春秋取材班は下村氏に対して、電話と対面で合計5回、2時間弱にわたって事実確認を行っている。下村氏は取材に対して、土下座したことを何度も否定し、2000万円の入った紙袋を手渡そうとしたことについても「まったくのデマです」と語った。「森喜朗元首相へ下村博文元文科相が持参した疑惑の紙袋」でも、「丁寧に謝罪はしましたが、土下座なんかしていません。もちろん金銭を渡そうとした事実はありません。2000万云々はまったくのデマです」とする下村氏のコメントを掲載している。

 森功氏が下村氏に電話で初めて取材したのは9月24日だった。下村氏はこの時、紙袋を持参したことは認めたものの、その中身についてはこう語っていた。

「毎回、挨拶に行く時は、お菓子等、持っていってますので。ちょっとどんなお菓子だったか、その時は秘書に任せてますので覚えてません。ただ、持っていったということです」

 森功氏が「紙袋の中身を確認して欲しい」と求めると、下村氏は「後で秘書に聞きます、調べます」と語り、2日後の9月26日午前11時に衆議院議員会館の事務所でインタビューに応じた。