東京の大衆そば屋で豚肉を使った「冷や肉(そば)」の名店といえば、足立区梅田などにある「角萬」の「冷し肉なんばんそば」、豊島区長崎(椎名町駅前)にある「南天」の「冷やし肉そば」が抜きん出ていると思う。そんな「角萬」の「冷や肉(そば)」が大好きな方が出店した店が荒川区町屋にある。「肉蕎麦むね 町屋店」である。
久しぶりの町屋
10月中旬の日曜日の午後2時頃、さっそく訪問してみることにした。東京メトロ千代田線町屋駅に降り立つ。実に6年ぶりである。サンポップマチヤの地下にある居酒屋「ときわ」は相変わらず混んでいた。1番階段から地上へ出て、尾竹橋通りを北東に歩いていく。以前、地下鉄出口近くには「ちかてつそば」があったし、少し歩けば「麺の善當」、「もりたみ」などの立ち食いそば屋があったが今はもうない。「八起そば」だけ営業している。約7分で「肉蕎麦むね 町屋店」に到着した。
すでにカウンターで常連さんが緑茶割りを飲みながらそばを食べている。入口はこぢんまりとしているが、入店すると6席のカウンターの奥にテーブル席が2つあり、意外と広く落ち着いた雰囲気である。
女将と娘さんたちで切り盛り
女将の吉田美佐子さん(50歳)と長女の彩乃さん(29歳)が笑顔で迎えてくれた。店主でご主人の吉田在棟さん(50歳)は、こちらではなく保塚店にいて不在だった。町屋店は長女、次女、三女の三姉妹、そして頑張り屋さんのスタッフの亜里沙さんがサポートで入り、切り盛りしている。さっそく人気の「冷肉蕎麦」(1000円)と「焼きおにぎり」(250円)を注文した。そして開店の経緯などを二人に訊いてみた。
そば好き店主の決意
店主の吉田在棟さんはとにかくそばが好き。建築関係の会社を経営し、移動先では常にそばを食べ歩き味のデータを収集していたそうである。中でも一番好きだったのが足立区梅田の「角萬」。しかし、こちらの営業時間は昼のみでしかも12時過ぎに売り切れることも多いのだとか。「振られる」ことが幾度となく続き、こうなったら味の研鑽を積んで「自分が食べたい味のそば屋をやろうじゃないか」と一念発起した。