日本とアメリカでは“問題の発覚の仕方”が大きく異なる
しかし、今回の喜多川氏の性加害事件同様、アメリカでは、少年に対する性的虐待は昔から行われていても、被害者たちは同性男性にセクハラされるという恥辱感やホモセクシュアル視されたくないことから、長い間、声を上げてこなかった。その結果、メディアからもあまり光が当たらなかった。その意味で、日本とアメリカは同じ状況だったと言える。
もっとも、大きな違いがある。それは、問題の発覚の仕方だ。日本は一般的に外圧に弱いと言われているが、今回もご多分にもれず、英BBCのドキュメンタリー番組が報じて初めてテレビや新聞などの主要メディアは問題にメスを入れ始めた。そのことは米紙でも報じられているので、X(旧ツイッター)を見ると、以下の声が上がっている。
「日本のメディアは非常に腐っている。何十年も、性的虐待のことはわかっていたのに、海外メディアが報じて、やっと報じ始めた」
では、アメリカではどのようにセクハラの事実は発覚しているのか?
メディアと“共謀”してスクープを抹殺したワインスタイン
アメリカでも、セクハラの被害者たちがなかなか声を上げないことから、性的虐待問題はメディアでもあまり取り上げられなかったが、それを問題視したジャーナリストがいた。ウッディー・アレンとミア・ファローの息子とも言われているローナン・ファローである。
ファローは、ハリウッドでは“公然の秘密”であり、みなに見て見ぬふりをされていたワインスタインの性的虐待問題に注目、カミングアウトするのを躊躇していた性的虐待の被害者たちを説得してインタビューし、性的虐待の証拠となる録音テープを得ることに成功した。
しかし、スクープを掴んでも、メディアは冷たかった。ワインスタインは、喜多川氏のようにメディアに対する影響力があまりにも大きかったからだ。実際、ファローは当時仕事をしていた米3大ネットワークの1つNBCにスクープを持ちかけたが、スクープは抹殺された。ファローが調査取材をしていることを知ったワインスタインがNBCに圧力をかけ、両者の間で“スクープを抹殺する”という約束が交わされたからだ。NBCはまたファローに証拠の録音テープを提出するよう圧力をかけてきた。ワインスタインの方はスパイを使ってファローを監視するようにもなった。
ワインスタインとメディアの“共謀”により抹殺されたファローのスクープ。一方、喜多川氏のケースでは、メディアが芸能界で絶大な権力を持っていた喜多川氏に対して忖度していたと言われている。『週刊文春』で1999年にすでに喜多川氏のセクハラ問題が報じられていたことを考えると、日本の主要メディアは2023年に至るまでの長きにわたって忖度して沈黙、自ら、事実を抹殺してきたことになる。SNSにはこんなコメントも投稿されている。