「日本の主要メディアが沈黙する中、60年間、多くの子どもたちが構造的虐待に遭い、レイプされてきた。問題があることはわかっていたのに、誰も止めようとしなかった」
しかし、ファローのスクープはNBCでは抹殺されたものの、雑誌『ニューヨーカー』での掲載に至り、ワインスタインの性的虐待の事実は明るみに出された。身の危険を感じながらも地道に行った調査取材が実を結び、ファローは、2018年、ノンフィクション賞の最高峰「ピューリッツァー賞」を受賞する。
セクハラ問題の解決の糸口になるのは何なのか
一方、抹殺されてきた喜多川氏の性加害問題は、英BBCの調査取材により、ようやく世界に明るみに出された。BBCが報じることができた一つの理由として、喜多川氏が欧米の一般人にはほとんど知られていないという知名度の低さがあると思う。実際、性加害問題が多くのメディアで報じられた後は、17日にジャニーズ事務所が「スマイルアップ」へと社名変更したことは一部のメディアでは報じられたものの、事務所の看板が撤去された件までについては報じられていない。
欧米では喜多川氏はその程度の知名度ゆえに、ジャニーズ事務所と日本のメディアの間にあったと言われている“癒着”が生じることがなかった。何も忖度するものがなかったBBCは事実をそのまま報じることができたのだろう。
忖度するものがなければ、セクハラ問題の解決の糸口になるものは何か?
求められるのは“告発する勇気”と“報じる勇気”
ファローは「ワインスタインの性的虐待を明るみに出すことができたのは、被害者たちにカミングアウトする“勇気”があったからだ」と述べている。確かに、喜多川氏の性加害問題が発覚したのも、泣き寝入りしていた多くの被害者たちが、カミングアウトする“勇気”を呼び起こしたからだ。しかも、実名で、である。実際、実名報道については、「当社は、通常、性的暴行を受けた人々を特定しないのだが、喜多川氏のことを告発した人々はニュースで名前を公表する決意をした」とAP通信も指摘している。
日本の報道の自由度は世界的に低い。メディアにもまた、被害者たちの“勇気”に応え、権力におもねることなく、事実を伝える“勇気”が求められている。
喜多川氏の性加害問題は日本の恥を世界に晒したが、日本がそこから得た“告発する勇気”と“報じる勇気”という教訓を踏まえて、今後も起きうるセクハラ問題にどう対処するか注目したい。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。次のページでぜひご覧ください。