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「……専門学校でも、今の職場でも、あのー、男性ばかりでして……そのー、女性と話すことに慣れていないもんですから……。それで、まあ、思い切って……女性と付き合って、結婚するための方法を教えてもらおうと、思ったんです……」

「では、コミュニケーションを取れる女性という(と)」

「母親です」質問を語尾まで聞かずに答えた高井さんの表情がそれまでと打って変わり、生き生きとしていたのをはっきりと覚えている。

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結婚に関する質問の答えのほとんどに、母親の存在が影響

――なぜ結婚したいのか?

「母親を安心させたいから」

――どんな女性が理想か?

「母親のように、優しくて思いやりがあって、しっかりした女性です」

 結婚に関する質問の答えのほとんどに、母親の存在が影響していた。

 幼い頃に両親が離婚し、母親と2人で暮らしてきたことから、母親への愛情がなおのこと深いことがうかがえた。男性は程度に差はあっても、多くが母親に対して強い愛着を持っているものだ。ただ、この時の高井さんには、単に「マザコン」と片付けてしまうことのできない、複雑な思いがあるように思えてならなかった。

「母親には逆らえない」

 結婚するため、女性との交際術を学んでも、実際に女性と出会い、交流する機会がないと、生かすことができない。ましてや女性と一度も付き合ったことのない高井さんにとって、交際にたどり着くのは至難の業だった。

 30歳代前半は母親が自身の中学、高校時代の友人や職場、地域の知り合いを通じて見つけてきた女性と見合いを10数回重ねたものの、交際に至ることはなかった。「見合いをしている最中は、もしかしてうまくいくかもしれないと思う時もあるんですが、相手からお断りの返事ばかりで……」と回数を重ねるごとに自信をなくしていく様子が見て取れた。