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――中学校は制服がありますよね。

歩夢 ブレザーでした。スカートをはくのが本当に嫌で、ずっと下にジャージを着ていました。なんとか女子っぽく見えるようにと髪も肩まで伸ばしてたけど、女子にはなりきれませんでしたね……。それは周りの人にも伝わっていたようで、すれ違いざまに「いまスカートはいてる男子いなかった?」って言われたこともあります。後で聞いたら「かなり無理してるように見えた」と。

 

――自分のことは何と呼んでいたんですか?

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歩夢 「わたし」が嫌だったのでいつも「自分」でしたね。

「カミングアウトしたら家がぐちゃぐちゃになっちゃう気がして」

――その悩みは誰かに相談しましたか。

歩夢 誰にも言えませんでしたね。中学に入る少し前に自律神経失調症と診断されて、精神安定剤を飲むようにはなってたんですが、今思えば身体のことが大きかったんだと思います。その悩みも親には言えませんでした。

――親に話して伝わるとは思えなかった?

歩夢 100パー揉めるやろうなって。当時はテレビにはるな愛さんとかいわゆるオネエタレントの方がよく出るようになった時期なんですけど、やっぱりイジられて笑われる存在で。家族は父は割と楽観的な人なんですけど母が世間体を気にするタイプでした。あとは当時家庭環境もあまりよくなくて、ここで自分がカミングアウトまでしたら家がぐちゃぐちゃになっちゃう気がして。

高校生の頃の歩夢さん

――家族にも言えない状況はいつ頃まで続いたんでしょう。

歩夢 結局、高校を卒業して実家を出るまで親には言えませんでした。でも実家を離れて大阪で一人暮らししながら専門学校へ行くようになったら、自分が男性なことはどんどん明らかになりました。その頃には髪の毛も短くして専門学校では男性として生活していました。でもたまに実家に帰る時は「あゆみちゃん」(女性だった頃の名前)を演じないといけない。実家に帰る度に、自分がバラバラになる感じがしました。

――一息つけるはずの実家が、嘘の場所になってしまった。