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「いじめは一件もなかったことになっていた」

 17年11月の文書では、市教委教職員課からの聞き取りとして、<中学校2年生の清掃時に友人にいやがらせ(メガネを破損)を受けたことがある。その件について指導が中途半端に終了し、継続指導のまま3年生に進級した。…(中略)…当時の中3の担任はヒロシさんを守りながら、「もっと笑え」等(記憶は定かではないが)、激励の言葉がけをした記憶がある>などとされている。

担任とのかみ合わないやりとりが続いたノート

 教育委員会はヒロシさんや当時の担任教師などに対する聞き取り調査の結果として、同級生からヒロシさんがいやがらせを受けていたとは認めたが、それがイジメや暴行であるとは認定していない。

 当時のイジメの定義は「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの」だ。傷つきがあったのだからイジメに該当すると思われるが、中2時の担任からは報告がされていなかった、ということなのだろう。

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「不適切な指導ではないという判断になってしまった」

 また、中3時の教師の指導は激励の範疇で、不適切な指導とは言えないというものだった。

「中3の時の担任は、当時の言動を大筋では認めていました。でも『もっと笑え』などの発言は僕を思いやって声がけをした、ということになっていた。それで、教育委員会も不適切な指導ではないという判断になってしまったわけです。

 しかも市教委の説明では、中2のとき、イジメは一件もなかったことになっていました。中3時の担任の言動は認めましたが、処分するほどのことではないとして、懲戒はされていないんです。許せない気持ちは今でもあります。処分をしない方針については、つよい怒りを覚えます」(ヒロシさん)

 

 中3時の担任はその時、次のような文面で考えを寄せた。

《当時の一つ一つの言葉掛けは記憶が定かではないことが多い、しかし、本人が言っているのであれば、事実であろう。辛い思いをさせていたことは申し訳なく思っている。人前で極端に褒めるバカにしたような態度については、バカにしているという気持ちはなかった》

 ヒロシさんは、現在も通院、投薬をしながらの生活を強いられている。

「僕をイジメた人たちは楽しそうに生きているのに、僕は今でも精神科やカウンセリングに通う生活を余儀なくされています。しかも学校は当時も守ってくれなかったし、今でもその処分どころか謝罪すらしてくれません。イジメ・不適切な指導の被害者や後遺症の人は救われないんです」(ヒロシさん)